第245話

「女の子が男に力で勝てるわけないだろ? もう負けを認めてくれないか? 別にもういう事を聞かなくて良いから」


「私のプライドの問題よ!」


「うっ!」


 顔面に向かって蹴りを入れてくる彼女の足を俺は片方の腕でガードする。

 強い。

 でも、それは女子の中ではという話しだ。

 恐らくそこらへんのチンピラや不良には確かに負けないだろう。

 でも、この子が自分の力を過信している節がある。

 ここで自分の実力を実感させないと彼女は無茶をするかもしれない。


「はぁ……はぁ……」


「動きに無駄が多すぎるよ、だから直ぐに息切れを起す。まぁ、素人が独学で良くここまで強くなったと思うけど」


「馬鹿にしてるの……」


「違うよ、もっと自分の実力を知って欲しいと思っただけだ」


「実力を知ってる暇なんて無いのよ! 強く居続けないと……あいつらがまた私を……」


 あいつら?

 あの不良たちの事か?

 もしかして街に不良が多い理由と何か関係あるのか?

 そう言えばこの子が転校して来てからだ、街に不良が増えたのは。


「気が変わったよ……勝って君がなんでそこまで強くなりたいのかを聞くことにする……」


「え……」


 そう言って僕は彼女に向かって構えた。

 そして彼女が隙を見せている間に一気に距離を詰め、彼女の顔面めがけて寸止めのパンチをする。


「なっ!!」


 一瞬彼女は何が起こったのか分からずただぼーっとしていた。

 でも、直ぐに何が起きたのかが分かり、その場にへたりこんでしまった。


「あ……あんた……何者よ……」


「ただの高校生だよ? それより君に何があったか教えて貰える? 僕勝ったし」


 なんて事を僕が彼女に言っていると背後に何かが飛んで来るのを感じた。

 俺は背後に振り返り咄嗟に飛んできた物を掴む。

 飛んできたのは木刀だった。

 見てみると、道の両サイドから大勢の不良たちがこちらにやってきていた。


「おい! やっと見つけたぞぉ!」


「てめぇさっきは良くもやってくれたなぁ!」


「ぼっこぼこにしてやるよぉ!!」


 なんでこういう奴らに限ってしつこいんだよなぁ……。

 まぁでも奇襲のつもりで投げてきたのが木刀で良かった。

 

「ねぇ、こいつらさっさと片付けるからさっきの事ちゃんと話してよね?」


「え……あ、アンタこの人数を一人でなんて絶対無理に決まっ……」


 俺は彼女が話し終える前に木刀を構えて相手に向かっていた。

 まずは一人、俺は木刀で不良を投げ飛ばす。


「なっ……」


「ぼ、木刀で人間を吹っ飛ばした……」


「な、なんなんだよこいつ……」


「ねぇ……なんでも良いけど、早く終わらせたいんだ。出来ればさっさと逃げてくれない? 倒す手間が省けるから」


「な、何だとぉ!!」


「テメェら! 頭数はこっちの方が多い!」


「ビビってんじゃねぇぞ!!」


「「「「おぉっ!!」」」」


 掛け声と共に大勢の不良が僕に向かってくる。

 一人、また一人と倒していくうちに統制も何もとれていない不良たちはどんどん減って行った。

 逃げた者や倒れた者、戦っていて分かったがやっぱり小者だ。

 比べるべきじゃないけど、やっぱりヤクザと比べるとかなり弱いな。

 そして………。


「はぁ~疲れた」


「あ……あんた……本当に一人で……」


「だから言ったでしょ? 僕の方が確実に強いって」


 そう言うと彼女は緊張が解けたのか笑みを浮かべながら僕を見た。


「本当ね……いいわ、教えて上げるわよ」


「じゃぁ、ここは場所も悪いし移動しようか」


 僕はそう言って彼女と共にファミレスに向かった。

 それにしても不良の数が多すぎる。

 一体何が起こっているのだろうか?

 彼女から何か情報を引き出せるだろうか?

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