第244話

「アンタみたいな優男に何が出来んのよ、強がんなくて良いから」


「そう思う?」


「当たり前でしょ、さっさと帰って」


「そう……分かったよ、じゃぁあいつらを僕がかたずけたら信じてくれるよね?」


「え? あ、ちょっ! アンタ!!」


 僕はそう言いながらつけて来ている男の元に行く。


「彼女に何か用かな?」


「あん? なんだテメェ……」


「いや、なんだか君たちがずっと彼女をつけているみたいだからね、ちょっと話を聞きたいんだ」


「うるせぇな、なんなんだよお前、邪魔だからどけよ!!」


 そう言って肩を叩いてくる素行の悪そうな学生。

 僕はそんな学生の腕を掴み、そのまま腕を固めた。


「いててて!! な、何すんだこの野郎!!」


「いや、手を出されたからビックリして」


「ビックリしてすることじゃねぇだろ!」


 俺がそんな風に騒ぎを起していると他につけていた男達も集まって来た。


「おい! てめぇ俺のダチに何をしてんだよ!」


「あぁ、君の知り合いなんだ、ごめんごめん急に暴力を振るわれたものだからビックリしてね」


「てめぇ喧嘩売ってるのか!」


「いやいやそんなつもりはないよ」


 そんな話をしている間にどんどん人が集まってくる。

 相手は6人か……こいつら暇なのか?

 さて、この流れだと恐らく路地かどこか人のいないところに連れて行かれるな。

 彼女は……あ、こっち来た。

 

「ふんっ!」


「ぎゃん!」


 え!?

 いきなり蹴る??

 彼女はこちらにやって来たと思ったら、僕を取り囲んでいた男達を蹴り倒した。

 そして僕の腕を握る。


「逃げるわよ!」


「え? あ、ちょっと!」


「あ、逃げたぞ!!」


「追え!!」


 僕たちはそのまま街中を走って逃げた。

 そして数分後、なんとか奴らから逃げ僕たちは住宅街まで来ていた。


「はぁはぁ……何やってのよ! 馬鹿じゃないの!?」


「いや、そうかな? 大丈夫だと思ったけど? どうせ全員素人だし」


「素人って何よ? 全く……カッコつけようとなんてしなくて良いわよ。あと私にはもう関わらないでよ」


「でも、さっきの奴らにつけられてたし心配だよ。それに転校してきたばかりで頼る宛てもないだろ?」


「自分の身は自分で守れるわよっ!」


「おっと、危ないなぁ~急に蹴らないでよ」


 彼女は俺にそう言いながら蹴りを入れてきた。

 俺は彼女の蹴りを避け一歩後ろに下がる。

 彼女はなぜかバックを地面に置いて臨戦態勢だ。


「私より強いんでしょ? なら証明してよ」


「ごめん、女の子とは極力戦わないようにしてるんだ」


「何? 言い訳? じゃぁ、私に勝てたらアンタのいうことなんでも一つ聞くわよ」


「急にどうしたの? さっきまで僕になんか興味無かったのに」


「そうね、さっき不良を固めてたのを見て少し興味が湧いたのよ、口だけの奴ではなさそうだなって」


「……そっか、勝ったらなんでもいう事を聞いてくれるんだっけ?」


「えぇ、やらせろっていうならそれでも良いわよ。もっとも私に勝てたらだけ……」


 僕は彼女が話し終える前に彼に殴り掛かった。

 彼女は咄嗟のことに驚き、すかさずガードの姿勢を取るが拳は当たらない。

 流石に僕も女子を殴るのは嫌なので寸止めだ。


「今の当たってたら僕の勝ちだったと思うよ?」


「い、いきなりなんて卑怯よ!」


「喧嘩って騙し打ちも結構多いよ? それに先に蹴って来たのは君だし」


「うるさいわねっ!」


「おっと」


 そこから彼女の反撃は始まった。

 やっぱりいうだけのことはある。

 恐らくだけど気の絡まれてた不良よりは各段に強い。

 それに女子ながらのしなやかな動きで攻撃を加えてくるのは厄介だ。

 てか、スカートで足技はやめた方が良いんじゃないかな?

 

「はぁ……はぁ……」


「もうそろそろやめない?」


「まだよ! 私はまだ負けてないわ!!」


 困ったな……諦めそうもないし、かといって彼女に手を上げるのは嫌だし……。




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