第243話
*
平斗と別れた後、僕は一人で街に来ていた。
理由は簡単、最近どうも素行の悪い輩が増えてきているという話を聞いたのでそれを確かめに来たのだ。
「なるほど……確かに絵に書いたような不良がぞろぞろと……」
確かに街には素行の悪そうな連中がちらほら居た。
なんで平和だったこの街にそんな連中がうろつくようになったのだろうか?
まぁどちらにせよ、こいつらの目的が平斗である可能性もあるので、放っておく訳にもいかない。
現に一度襲われているわけだし。
「さて、ちょっと話しでも聞いてみるか? でも、いちいちこいつらから喧嘩とか仕掛けられたら面倒だな」
そんな事を考えながら歩いていると、路地の裏の方から男の怒鳴り声が聞こえた。
「やっちまえぇぇ!!」
喧嘩か?
こんな街中で喧嘩なんて珍しい。
僕は止めるついでに話しを聞こうと思い、声のした方向に向かった。
路地を抜けるとそこには開けた空間があった。
建物と建物の間に出来た空間は少しうす暗かったが真っ暗ではなかった。
そこに居たのは学ラン姿の男が三人と金髪の女の子だった。
女の子を見た瞬間、俺はハッとした。
「倉敷さん?」
そこに居たのは倉敷さんだった。
しかも、三人の男のうち二人は既に倒れており、状況から見て倉敷さんが倒したという事が想像出来る。
しかも驚くべきことに彼女は無傷だった。
『……女の子なのに前の学校で男子生徒三人を半殺しにしたって……』
そこで僕は今日聞いた話しを思い出した。
同級生の男子を三人半殺し……。
しかし、ここで倒れている男達は半殺しには程遠い。
手加減しているのだろうか?
「くそっ! この女! いい加減にしゃがれ!!」
「ふんっ!」
「あがっ!」
倉敷さんに向かっていた最後の男は倉敷さんに蹴り飛ばされて地面に倒れた。
やっぱり倉敷さんは強い。
見ていて分かった、蹴りの鋭さと力強さ。
しかし、やっぱり型も何もない無茶苦茶な蹴り。
独学でこの強さは才能かもしれない。
「はぁ……」
倉敷さんはため息を吐き、鞄を持ってそのままその場を後にしようとした。
「倉敷さん!」
「……ん?」
僕が倉敷さんを呼び止めると彼女は僕の方を振り向き、癒そうな顔をしてそのまま無視して行ってしまった。
「あ、待ってよ!」
「……なに?」
「なんで喧嘩なんてしてたの?」
「関係ないでしょ」
「まぁそうだね、でも女子が絡まられてたら普通心配するでしょ?」
「アンタに心配される必要なんて無い」
「まぁそうだけどさ……それにしても前にも思ったけど倉敷さん強いね」
「………」
「どこで戦い方は教わったの?」
「………」
「そう言えば最近なんか不良が街に多いらしいから気を付けた方が良いよ?」
「……あのさ」
「なに?」
「うざい、話しかけないでよ」
歩きながら話しを続ける僕をうざったく思ったのだろう。
倉敷さんは冷たい表情で僕にそう言った。
そんな倉敷さんの表情に俺は仕方なく「わかったよ」と言って彼女から離れようとした。
しかし、その瞬間気が付いてしまった。
男が数人僕と倉敷さんをつけて来ていることに……。
「倉敷さん」
「……聞こえなかった? 話し掛けないで」
「ごめん、でもつけられてるよ? 多分男が数人」
「………あっそ」
「あっそって……待ってよ、危険だ! 人の通りの多い場所を歩こう!」
「逃げたってどうにもならないわよ、だから誘いこんで倒すわ」
「誘いこむって……」
まさか戦うつもりなのか?
さっきの戦いで消耗しているのにまた男数人を相手にするなんて、彼女には厳し過ぎる。
「わかった、じゃぁ僕も手伝うよ」
「邪魔、帰って」
「そうかな? 倉敷さんがどんなに強いかなんて知らないけど……多分僕の方が確実につよいよ」
「………」
そう言うと倉敷さんは何も言わずに僕を睨んできた。
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