第236話



「おい、あの女だ」


「結構可愛いじゃねぇか」


「さっさと連れ込んでやっちまおうぜ!」


「あぁ、そうだな!」


「おい、何してんだ?」


「「え?」」



「えっと、確かこの道を帰ってるらしいけど……」


 僕は平斗に言われてとある女の子を探していた。

 理由は聞かなかったがその子が何らかの危機が迫っているのは何となく分かる。

 

「早くしないと手遅れになるかもしれないし、急ぐか」


 僕は急いでその子のクラスの子に聞いた下校ルートを探していた。

 

「ぎゃぁぁぁ!!」


「ん?」


 路地裏から男の叫び声が聞こえてきた。

 もしかしてこっちか?

 僕はそう思って路地裏に入って行った。

 すると、そこには女の子二人を取り囲む四人の男達が居た。


「てめぇ! 良い気になるんじゃねぇぞ!」


「数はコッチが有利なんだよ!」


「女一人に四人がかり……アンタらダサいわね」


「な、なんだとぉ!!」


「お前ら! やっちまおうぜ!」


「「「「おう!!」」」」


 物陰から僕は様子を見ていた。

 男達に向かっていたのは長い金髪の女子高生。

 同じ学校の制服で男達をどんどんなぎ倒していた。


「なんだ? あの子……」


 僕が見てきた女子の中ではかなり強い方だった。

 しかし、パンチや蹴りが素人っぽく、武術や格闘技をやっていた感じは一切ない。

 恐らく自己流だろう。


「弱いわね……」


「く、くそぉ……」


「この女ぁ!!」


 苛立つ男達。

 金髪の女の子が残りの二人の男に止めを刺そうとした時、もう一人の女の子の悲鳴が路地裏に響いた。


「きゃぁぁぁ!!」


「お、おい! この女がどうなっても良いのか?」


「……卑怯者……」


「へへ! でかした!! さぁて……たっぷりいじめられた分、楽しませてもらおうかぁ~」


「くっ……」


 金髪の子は抵抗をやめた。

 恐らく人質の女の子のためだろう。

 男達の手が彼女の胸に伸びていく。

 それを見た瞬間、僕は飛び出していた。


「ねぇねぇ、君たちさモテないでしょ?」


「な、なんだてめぇ!」


「コッチは今からお楽しみなんだよ!」


 そう言いながら一人の男が僕を殴ろうとしてくる。

 僕はその拳をかわし、その男の頭に蹴りを入れる。


「ぐあっ!!」


「お、おい! てめぇ!!」


「君たち見たいなのを見てると……虫唾が走る!!」


「ぎゃぁぁ!」


 もう一人には股間に蹴りを入れる。

 正しく使わないのなら必要ないだろ。


「や、野郎! こ、この女がどうなって……って、ど…どこに行った?」


「あのさぁ、少しは警戒しようね」


「な! い、いつのまぐはぁっ!!」


 人質を取っていた男の腹には平斗直伝の正拳突きをお見舞いした。

 男はその場にうずくまった。


「全く、女の子相手に男がこんな大勢で……君大丈夫?」


「は、はい……あ、あの貴方は?」


「ちょっと知り合いに頼まれて君を助けにね、君が牧島さん?」


「は、はい」


「そっか、なら助けられてよかった。それで君は?」


「………」


「あ、ちょっと!」


 金髪の女の子は僕の問いに答えないまま、その場から立ち去ってしまった。


「君、あの子の友達?」


「い、いえ……でも助けてくれて……」


「そっか……」


 ただのいい子なのか?

 でもあんな子学校で見た事ないけどなぁ……。

 

「一体誰なんだ?」


 自己流にしてはかなり実力を持った子だった。

 一体何者なのだろうか?

 彼女の喧嘩を見てから、平斗がなんでこの子を守ろうとしたのかよりもあの金髪のこの正体が気になり始めていた。

 

「なんだか似てるな……」


 この子を守ろうとした彼女を見て僕はなんだか昔の平斗に似ているなと思ってしまった。

 

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