第233話



「……」


「……平斗」


「……俺がもっと注意していれば……」


「平斗のせいじゃない、佐久間が起き上がってるのに気がつかなった僕の責任でもある」


 あの後、警察が到着し俺達は保護され柳は病院に運ばれ死亡が確認された。

 佐久間は逃亡し、他のヤクザ達はその場で御用となったが下っ端ばかりであの薬の事を知らされている者はいなかった。

 俺と高弥は二人で病院に居た。

 この後は警察の事情聴取と多分お説教が待っている。

 

「高柳家の当主泣いてたね」


「あぁ、言ってたよ……また一緒に酒を飲みたかったって」


「………なんか後味の悪い終わり方だね」


「全くだ……あの佐久間という男、一体何者なんだ?」


「父さんが調べてるけど、恐らく最近力をつけているヤクザの一味だって言ってたけど」


「ヤクザ?」


「あぁ、清蓬会というヤクザの組織らしい」


「清蓬会?」


「ここ数年で力をつけてきたヤクザの組織であの薬をバラまいてる大元らしい」


「そんな奴らと……でもちょっと待て、ここら一体は大板組が仕切ってるだろ? そんな勝手な事してあそこの組長が黙ってるとは思えないが?」


「大板組でも抑えられないほどの組織力ってことだよ」


「そんなにか……」


「もしかしたら、そのうち平斗のお父さんや竹内さんの所に大板組の組長が来るかもね」


「……父さん達が駆り出される事態なのか?」


「まだ分からないけどね。まぁでも今はそんな事は忘れて疲れを癒そう、僕たちも相当ダメージを受けた」


 高弥も俺もそこまでの怪我では無いが、打撲に切り傷などが無数に身体に出来てしまった。

 手当をしてくれた看護婦さんからは「喧嘩なんてしちゃダメよ!」と怒られてしまった。

 

「さて、明日で夏休み終わりだし療養に専念しようか」


「そう……だな」


 俺は高弥にそう言いながら佐久間の言葉を思い出していた。


『……じゃぁなガキ共、その顔絶対に忘れねぇぜ』


 俺と高弥はもしかしたら何か大きな事件に巻き込まれてしまったのかもしれない。


「平斗! 高弥!」


「あ、竹内さん」


「なんでここに?」


「お前らがまた馬鹿やったって聞いてな、叱りに来た」


「「え……」」


 悪い顔をしながら竹内さんが俺と高弥を交互に見る。


「お前ら……また親や回りの人達に迷惑かけたな? 何度言えば分かるんだ?」


「ま、待ってください竹内さん! 今回の事は貴方も黙認してくれたんじゃ!?」


「はぁ? 何言ってんだよ、俺は稽古をつけただけだ」


「この鬼!」


「た、竹内さん! 僕は親にこのことを伝えて出て来ました、なのでお叱りは平斗だけに……」


「あ、てめぇ! こういう時だけ俺を売るな!」


「さ、流石に竹内さんの鉄拳制裁は勘弁だよ……」


「残念だったなぁ~高弥。お前の両親からもきつ~いのを頼むって言われてんだよ」


「な! そ、そんな!」


「と、いう訳でお前ら……覚悟は出来てるな?」


「た、高弥! 逃げるぞ! このままじゃ折角この程度の怪我で済んだのに重症になっちまう!」


「そ、そうだね!」


「逃がすかよ……待ちやがれ!!」


 その後、俺と高弥は竹内さんに捕まり、一発づつ拳骨をくらって気絶し目が覚めたら次の日だった。

 頭には大きなコブが出来ており、改めて俺達は兄貴分の恐ろしさを知った。

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