第231話

「おらっ!」


「ふん!」


「うぉっ! おいおいマジかよ……」


 高弥から借りた木刀を柳に叩きつけるが全く効いている様子がない。

 

「平斗どいて!」


「おう!」


「はぁぁぁっ!!」


 今度は高弥が柳の顎目掛けて拳を振るう。

 しかし、やはり効果がない。

 さっきの佐久間のようにはいかないか……。

 

「お前たちを生かして返すわけには行かない!」


「くっ! そんな怪しい薬を使ってまでお前は……」


「平斗、手加減なんてしてる場合じゃないぞ」


「分かってるよ、こちとらさっきから全力だ」


 俺はそう言いながら高弥に木刀を渡す。

 このまま戦っても勝てる気がしない。

 何か作戦たてなければ勝てない、だが薬の詳細もよくわからないしどんな効果があるのかも理解していない。

 本当にただの筋力増強なのか?

 それにしては不自然くらい肉体が変化している。

 こんなに急激に身体が変化して身体に負担がない訳がない。

 薬にも時間制限が?

 それまで逃げ切るか?


「高弥、恐らく薬にも効果時間があるはずだ! それから肉体の限界がくる! それまで攻撃を避けて様子を見よう!」


「避けるのも精一杯だけどね」


「そんな悠長な事を言っていられるかな?」


「くっ! 早い!!」


 柳の攻撃は早い、しかもパワーもある。

 だが、柳自身が戦闘に馴れていないのか攻撃を読むことは用意だ。

 

「ちょこまかと!!」


「くそっ! 平斗いつまで避ければ?」


「分からん! 今は柳の限界が先に来るか俺達の限界が先にくるかの根比べだ!」


 俺は高弥にそう言い、柳の攻撃を避け続けた。

 あれだけ無駄の大きい動きを繰り返していれば体力だってそのうち無くなる。

 しかし、こっちも体力はあまり残っていない。

 佐久間はまだ気絶しているが、こっちも起きて二人を相手になんてしたら厄介だ。

 

「あっぐ!」


「平斗!」


 俺は先ほど佐久間から受けたダメージのせいで一瞬ふら付いてしまった。

 そこを柳は見逃さなかった。

 

「死ねぇ!!」


「ぐっ!」


 柳の拳が俺の横腹にめり込む。

 間一髪で腕でガードしたがダメージは大きい。

 直撃した柳の拳は重たく一瞬気を失い掛けた。

 この攻撃、もしかしたら竹内さん並のパワーがあるんじゃ……。

 ヤバイ……また攻撃を受けたらやばい。


「とどめだ!」


 再び柳が拳を構える。

 早く動かなくてはいけないのだが、身体が動かない。

 

「平斗! んっ!」


「すまん高弥……」


 柳と俺の間に高弥が入り、木刀で柳の拳を止める。

 

「いい加減に倒れろ!!」


「すいませんねぇ、倒れることなんて出来ないんですよ!」


「ぐあっ!」


 高弥が木刀を振り上げ柳の腕に振り下ろす。

 すると柳は今まで声を上げなかったのに、声を上げた。

 恐らく薬の効果が切れ始めているのかもしれない。

 ここからは反撃に出るか……。


「高弥、俺に合わせてくれ! 一気に決める」


「分かった!」


「行くぞ!」


 そう言った瞬間俺と平斗は柳から距離を置く、柳は俺と高弥どちらの攻撃を警戒するか悩み動きを止める。

 

「今だ!!」


「了解! はぁぁっ!!」


「おらぁっ!」


 俺と高弥はタイミングを合わせて柳に近付き、同時に柳の腹部に打撃を加える。

 

「ぐはっ!!」


 柳は片膝を着きその場にうずくまった。

 効いている、このまま攻撃を続ければ気絶させることが出来るかもしれない。


「高弥もう一度だ、さっさと決めよう!」


「あぁ!」


 俺たちは再び柳から距離を取り再び二人でタイミングを合わせ攻撃を仕掛ける。

 しかし……。


「ぬん!」


「なっ!」


「まさか!!」


 俺と高弥の攻撃は柳に止められた。

 まさか、まだこんな力が残っているなんて。

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