第221話
*
平斗と別れた僕は右側の廊下を歩いていた。
広いお屋敷なのに人は居ない。
まるで僕たちが来るのを予想して人払いをしたような感じだ。
「あの、そろそろ出て来てもらえませんか? 殺気が駄々洩れですよ」
誰も居ない廊下で僕はそう語りかけるように言う。
すると、背後から急に誰かが僕に襲い掛かって来た。
僕はその男に向かって木刀を振り下ろす。
しかし、寸前のところで木刀は相手に当たらず空を切る。
「っち……外したか」
「卑怯だなぁ~、子供相手に不意打ちなんて」
そんな事を話していると今度はまた反対方向から強い殺気を感じる。
「おらぁ!!」
「ふん!」
「ははは! 親父の言う通りだ! まだガキだは相当な腕のガキだぜ!!」
乱暴にトンカチを僕に向かって振り下ろしてきたもう一人の敵。
こっちの男は体格が良いが、最初に攻撃してきた男はやせ型でなんだかクールな雰囲気だ。
性格も戦闘スタイルも正反対な二人が相手か。
「最初の人はドス、貴方はトンカチですか……変わった武器を掴んですね」
「あぁ、良く言われるぜ、だがトンカチって言うのはかなり優秀な武器だと思わないか?」
「というと?」
「投げて当てても相手は大ダメージ、そのまま殴っても大ダメージ、だがそんなに重くなく、小回りの利く良い武器だ」
「なるほど、確かにそうですね」
「あぁ、このトンカチでお前の頭蓋も砕いてやるよ! クソガキィィ!!」
トンカチを構え大柄の男は僕に襲い掛かって来る。
僕は木刀を構え、大柄の男の足を救い上げるように木刀を振るう。
「ぬぉっ!!」
「でも、刀もなかなか優秀な武器なんですよ」
男はそのまま宙に舞い上がり、そのまま廊下に落下する。
「ぐはっ!! な、なんだ今のは……急に空に……」
「これは僕の家の剣術流派の型の一つですよ」
僕がそう説明しながら大柄の男に止めを刺そうとすると、もう一人の細身の男が襲い掛かってきた。
「ぐっ! 二対一って卑怯じゃないですか?」
「良く言う……その剣、真木流(しんきりゅう)か」
「知ってるんですね、うちの流派は親族にしか伝承しないのでマイナーな流派なんですけど、貴方ももしかして剣士ですか?」
「いや……その太刀筋を一度見たことがあるだけだ……忌々しい太刀筋をな」
「そうですか、もしかしてうちの親族と面識あります?」
「………あぁ、もちろんだ。その流派の人間を俺はずっと探していた……殺したくて仕方ない真木流の剣士をな!!」
そう言いながら細身の男はドスを二本持ち、僕に切りかかって来た。
僕は木刀でその攻撃を受け流す。
狭い廊下では長い木刀は振り、僕は戸を破って広い部屋に敵を誘い込んだ。
「お前……あの所長の息子だろ? ありがてぇぜ……あのうぜぇ所長の息子をここでやれる! あの偉そうな所長様の泣き顔が拝めるチャンスだぜ!!」
「くっ!」
恐らくこの細身の男は僕の父さんに何かしらの恨みを持っている。
木刀よりも短いドスは狭い室内では小回りが利くうえに素早い攻撃を連続して繰り出せる。
「くっ!」
「どうした? もう終わりか? お前の父親はもっと強かったぞ!!」
「そうでしょうね……でも!!」
「ぐはっ!!」
僕は男の腹を木刀で素早く突く。
「僕も強いですよ」
「て、てめぇ……」
「細谷! 二人がかりで行くぞ! こいつガキだが実力は持ってやがる!」
先ほどまで寝ていた大柄の男も戦いに参戦してくる。
なるほど、このドス使いの名前は細谷か……。
となるとこの大柄の男は太田か?
なんてことを考えながら、僕は木刀を構え細谷に向かって木刀を振るう。
「ふん!」
「へっ! 二度も食らうかよ!!」
「おらぁ!!」
「くっ!」
僕が細谷に襲い掛かると大柄の男が僕の隙をついて攻撃をしてくる。
なんとか対応してはいるが、少し厄介だ。
「表の奴らよりは出来そうだな……」
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