第220話



 ドアを開けると、そこには待っていましたと言わんばかりにスーツ姿の人相の悪い人たちが十数人構えていた。


「どうもー、こちら柳さんの家でよろしかったでしょうか?」


「柳健三に話がある……そこをどけ」


「平斗、少しは平和的解決って言うのを探ってみるのも良いと思うんだけど?」


 高弥がそう言っている間も俺は拳を構えていた。

 言葉などこいつらに届かないことは見ただけで良くわかった。

 やる気満々の荒々しい視線……こいつらは俺たちの話を聞く気なんてさらさらない。


「おいガキども、さっさと帰った方がいいぞ?」


「お前らガキをやるのにこの人数は十分過ぎる、それに実力もな!」


「早くママのところに帰れよ~」


 笑いながらそう言う男達。

 あまり初っ端から体力を消耗するのは嫌だが、仕方ない。

 俺は男達の方を睨んで構える。

 このために竹内さんに鍛えてもらったんだ。

 しかし、やる気満々の俺の前に高弥が立つ。


「まぁまぁ、まずは僕が行くよ。平斗は体力を温存していてくれよ」


「なんでお前がやる気満々なんだよ」


「まぁまぁ、良いじゃないか。少しそこで見ていてくれよ」


「……っち、わーったよ」


「ありがとう」


 高弥の顔は本気だった。

 なんであんなにも本気の顔をしているのか、俺にはよくわからなかったが、あいつのあぁ言う顔を見るのは久しぶりだ。

 俺は高弥が言うように少し下がって高弥の戦いを見る事にした。





「じゃぁ、始めましょうか」


「おいおい、一人で大丈夫かよ?」


「お友達に手伝ってもらった方が良いんじゃないのぉ~、まぁそれでも俺らの方が強いけどねぇ~」


 そう言いながら笑う男達に僕は一切の恐怖心も抱かなかった。

 僕は笑いながら、その男達の前に木刀を突き出す。

 懐かしい感覚だ。

 

「5分ってとこかな……」


「あぁ? 何言ってやがるガキ?」


「まさか、相手がこんなガキとはなぁ~こんな楽な仕事は他にないぜ!」


「じゃぁさっそく!! え……ぐはっ!!」


 僕はそう言った後に殴り掛かってきた男の攻撃を避け、背後から木刀を振るう。

 一発で男は気絶し地面に倒れた。

 それを見ていた男たちの顔付きは一気に変わった。


「て、てめぇ! 何をしやがった!」


「い、一撃!? こんなガキが!」


「あ、ありえねぇ!!」


 ありえないか……それは是非とも僕の祖父の剣や圭司の祖父の拳を見てから言って欲しいものだ。

 

「残り4分32秒……一気に行くよ!」


 先程言った五分という時間は僕がこいつらを倒すための時間。

 まぁ、この調子だと五分かからずに済みそうだ。


「この野郎!! あがっ!!」


「がきがっ!! ぶはっ!」


 僕は襲い掛かる男たちを木刀で薙ぎ払っていく。

 そして、最初の男を倒してから三分後。

 もう僕の前には誰も立っていなかった。


「なんだ、五分持たなかったか」


「お前、飛ばしすぎじゃね?」


「そうかな? 久しぶりだからちょっとはしゃいじゃった」


「お前が敵じゃなくてよかったよ……先を急ごうぜ」


「そうだね」


 平斗はそう言いながら笑っていた。

 僕たちはそんな話をしながら屋敷の中に入る。

 人の気配はなかった。

 だが、殺気を感じることは出来た。

 

「四人……一人二人の割り当てなら丁度良いかな?」


「さっきの雑魚と比べるなよ、確実にさっきの奴らよりも強いぞ」


「わかってるよ、じゃぁ僕は右を行くから平斗は左を頼む」


「終わったらこの玄関で落ち合うか」


「そうだね、あと助けて欲しい時は僕のところまで逃げて来ると良いよ」


「それはこっちのセリフだ馬鹿」


 そう言って俺たちはそれぞれ別な道に向かい始めた。


「死ぬなよ」


「お互いにね」


 最後にそう言葉を交わして。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る