第207話
*
「お前が話あるなんて珍しいな」
俺は飯を食った後、初白に呼ばれて別荘の外に来ていた。
改まって話があるなんて言われたが、一体なんだろうか?
まさか、こいつまで俺に告白なんてしてこねぇだろな?
まぁでもこいつは最近振られたからそれはねぇか。
「旅行楽しかったですね」
「そうだな、みんなとこうして出かけるなんて初めてだったからな」
「……瑠華ちゃんと何かありました?」
「え?」
ま、まさかこいつ気が付いていたのか?
いや、でも感づかれるようなことは何もしていないつもりだったが……。
「いま、なんでこいつ知ってるんだ? みたいな顔しましたね」
「お前、実はエスパーだったのか?」
「そうですよ、私は人の考えが読めるんです」
「嘘つけアホ」
「あいで! もう、先輩も乗ったくせに!!」
俺は初白の頭にチョップをくらわせる。
たく、話しがあるって言うからなんだと思えば……。
「どうでも良い話なら俺はもう戻るぞ」
「いえ、結構真面目な話ですよ」
「なんだよ……急に」
初白は真面目な表情で俺に話始めた。
「城崎さんの事は何となく想像できます。あの子わかりやすかったですから」
え?
そうなの?
俺、全く気が付かなかったんだけど……。
「ちゃんと考えてあげて下さいね」
「お前に言われなくてもわかってるよ」
「それと……」
「なんだよ、まだあるのか?」
そう言いながら俺が初白の顔を見ると、初白は不安そうな表情で俺を見つめながらこう言った。
「あんな無茶は二度としないでください」
「……」
いつもと違う雰囲気の初白に俺は一瞬言葉を失った。
そうか……お前も城崎さんと同じことを言うんだな……。
「あぁ、分かってるよ」
俺はそう言いながら、心の中で初白と城崎さんに謝罪した。
もう一度だけ、俺は無茶をしに行くかもしれない。
それは、今までよりも危険で大変だ。
戻って来たとき、俺がボロボロだったらまた初白や城崎さんに怒られるのだろうか?
「………お願いしますよ。もうあんな先輩を見たくないです」
こいつはこいつなりに、俺を心配してくれてるんだな。
「わかってるよ、俺もあんな姿はもう二度とお前には見せねぇよ、一生の恥だ」
「なっ! 人が先輩してあげてるのにそれは無いんじゃないですか!!」
「はいはい、悪かった悪かった」
「頭をわしわししないで下さい! ぐちゃぐちゃになるでしょ!」
俺はそう言いながら、初白の頭をくしゃくしゃと撫でる。
これで最後だ。
光音を誘拐しようとした奴との決着が付いたらもう無茶はしない。
「なぁ、初白」
「もう……なんですか、私は髪を直すので忙しいんです!」
「冬はみんなで温泉旅行なんてどうだ?」
「え?」
「また、みんなで旅行したいだろ? お前も」
「……温泉ですか……良いですね」
俺がそう言うと初白は笑顔で俺にそう言った。
「あ、でも先輩の場合混浴の温泉旅館を選ぶ可能性が……」
「んなわけねぇだろ馬鹿」
「えぇ~本当ですかぁ~」
「そもそもお前と混浴とかマジでない」
「いや、真顔で言うのやめてもらえます? リアルに傷つくので」
「まぁ、とにかくだ。俺が勝手にそう考えてるだけだけど、お前は誘ったら来るのか?
」
「もちろんですよ! バイトしてお金貯めておかないとですね」
「え? 来るの?」
「お、なんですか? 喧嘩ですか? 買いますよ?」
「冗談だよ、金貯めておけよ」
「はい! どうせなら旅館で年越しなんて良いですねぇ~」
「どうせガ〇使見てグダグダするだけだろ? それに大晦日なんて予約取れねぇよ」
「今からなら頑張ればいけますよ!」
結局いつも通りの感じになってしまった。
初白、悪い。
お前との約束はきっと破っちまう。
でも、これで最後だ。
だから許してくれ。
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