第207話



「お前が話あるなんて珍しいな」


 俺は飯を食った後、初白に呼ばれて別荘の外に来ていた。

 改まって話があるなんて言われたが、一体なんだろうか?

 まさか、こいつまで俺に告白なんてしてこねぇだろな?

 まぁでもこいつは最近振られたからそれはねぇか。


「旅行楽しかったですね」


「そうだな、みんなとこうして出かけるなんて初めてだったからな」


「……瑠華ちゃんと何かありました?」


「え?」


 ま、まさかこいつ気が付いていたのか?

 いや、でも感づかれるようなことは何もしていないつもりだったが……。


「いま、なんでこいつ知ってるんだ? みたいな顔しましたね」


「お前、実はエスパーだったのか?」


「そうですよ、私は人の考えが読めるんです」


「嘘つけアホ」


「あいで! もう、先輩も乗ったくせに!!」


 俺は初白の頭にチョップをくらわせる。

 たく、話しがあるって言うからなんだと思えば……。


「どうでも良い話なら俺はもう戻るぞ」


「いえ、結構真面目な話ですよ」


「なんだよ……急に」


 初白は真面目な表情で俺に話始めた。


「城崎さんの事は何となく想像できます。あの子わかりやすかったですから」


 え?

 そうなの?

 俺、全く気が付かなかったんだけど……。


「ちゃんと考えてあげて下さいね」


「お前に言われなくてもわかってるよ」


「それと……」


「なんだよ、まだあるのか?」


 そう言いながら俺が初白の顔を見ると、初白は不安そうな表情で俺を見つめながらこう言った。


「あんな無茶は二度としないでください」


「……」


 いつもと違う雰囲気の初白に俺は一瞬言葉を失った。

 そうか……お前も城崎さんと同じことを言うんだな……。


「あぁ、分かってるよ」


 俺はそう言いながら、心の中で初白と城崎さんに謝罪した。

 もう一度だけ、俺は無茶をしに行くかもしれない。

 それは、今までよりも危険で大変だ。

 戻って来たとき、俺がボロボロだったらまた初白や城崎さんに怒られるのだろうか?

 

「………お願いしますよ。もうあんな先輩を見たくないです」


 こいつはこいつなりに、俺を心配してくれてるんだな。

 

「わかってるよ、俺もあんな姿はもう二度とお前には見せねぇよ、一生の恥だ」


「なっ! 人が先輩してあげてるのにそれは無いんじゃないですか!!」


「はいはい、悪かった悪かった」


「頭をわしわししないで下さい! ぐちゃぐちゃになるでしょ!」


 俺はそう言いながら、初白の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 これで最後だ。

 光音を誘拐しようとした奴との決着が付いたらもう無茶はしない。


「なぁ、初白」


「もう……なんですか、私は髪を直すので忙しいんです!」


「冬はみんなで温泉旅行なんてどうだ?」


「え?」


「また、みんなで旅行したいだろ? お前も」


「……温泉ですか……良いですね」


 俺がそう言うと初白は笑顔で俺にそう言った。


「あ、でも先輩の場合混浴の温泉旅館を選ぶ可能性が……」


「んなわけねぇだろ馬鹿」


「えぇ~本当ですかぁ~」

「そもそもお前と混浴とかマジでない」


「いや、真顔で言うのやめてもらえます? リアルに傷つくので」


「まぁ、とにかくだ。俺が勝手にそう考えてるだけだけど、お前は誘ったら来るのか?


「もちろんですよ! バイトしてお金貯めておかないとですね」


「え? 来るの?」


「お、なんですか? 喧嘩ですか? 買いますよ?」


「冗談だよ、金貯めておけよ」


「はい! どうせなら旅館で年越しなんて良いですねぇ~」


「どうせガ〇使見てグダグダするだけだろ? それに大晦日なんて予約取れねぇよ」


「今からなら頑張ればいけますよ!」


 結局いつも通りの感じになってしまった。

 初白、悪い。

 お前との約束はきっと破っちまう。

 でも、これで最後だ。

 だから許してくれ。

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