第204話

「おい……なんで急にこんな……」


「………」


「随分集中してるな……なら、倒した後にきかせて貰うからなぁ!!」


「はぁぁぁ!」


 俺は立ち上がり高弥を本気で迎え撃つ。

 棒の分、高弥のリーチは長い。

 懐に入られないように棒を素早く振ってくる。

 くそっ!

 ちかづけねねぇ……このままじゃ俺が先に一発貰っちまう!


「すぅ………はぁっ!!」


「ぐっ!!」


 高弥の渾身の突きを俺は腕で受け止める。

 重い……昔やった時よりも強くなっている。

 何が次にやったときは勝てないだ、下手したら現時点で俺よりも強いぞこいつ!!


「ふん!!」


 今度は横腹めがけて木の棒が迫ってくる。

 しかし、今度の振りは大振りで近づくスキも出来た。

 

「貰った!!」


 俺はそのスキを見逃さず、一か八かで高弥の懐に潜り混んだ。


「なっ!!」


「おらよっ!!」


「ぐはっ!!」


 俺は高弥の顎めがけて拳を振り上げる。

 高弥はそのままよろけて後ろに倒れた。


「はぁ……はぁ……なんだよ急に……本気だしちまったろ……」


「いてて……はは、やっぱり強いな……平斗は……」


「よく言うな……いつもの木刀だったらやられてたっつの」


 高弥は砂浜に寝っ転がりながら俺にそういう。

 俺は高弥の隣に座り、呼吸を整える。


「……平斗、どうだった?」


「何がだよ」


「僕も結構強いだろ?」


「結構どころの騒ぎじゃねぇよ。急に襲ってきやがって」


「だろ? ………次に誰かとやるときは必ず僕を呼んでくれ」


「……なんでだよ」


「平斗一人だと心配だからだよ」


「余計なお世話だ」


「平斗……もう一人で解決しようとするのは辞めてくれ。今の僕でも君の足手まといかい?」


「………お前、自分の実力を俺に見せるためにこんなことをしたのか?」


「まぁね、どうせこの旅行が終わったら、あのお嬢様を誘拐しようとしてる奴のところに行くんだろ?」


 まさかそこまで見抜かれているなんて……。

 流石、伊達に何年も一緒に居ないな。

 

「まぁ、来るなと言われてもついていくけど」


「……たく、自分の身は自分で守れよ」


 俺がそう言うと高弥は起き上がり笑って俺に言った。


「むしろ、君を守る余裕まであるね」


「けっ……いつの間に稽古してたんだか……」


「うちのじいちゃんは厳しいからね」


「あぁ、あの爺さんな」


 久しぶりに戦った高弥は以前よりも強くなっていた。

 しかも、剣術の型を一つも使っていなかった。

 正直ここまで苦戦するとは思わなかった、高弥は確実に俺よりも実力を付けている。


「負けられねぇな……」


 俺は密かに高弥に対してライバル意識を持っていた。


「というか平斗。お嬢様を誘拐しようとした犯人に心当たりはあるの?」


「無い」


「………それなのに殴り込みに行こうとしてたのか?」


「いや、まぁ……そこは旅行から帰ってからかなと……」


「はぁ……無計画さは全然成長しないなぁ……」


「うるせぇな!!」


「ま、そんなことだろうとは思ったけど。僕も探ってみるよ、でも殴りこむときは作戦をねって万全の体制でいこう」


「わかってるよ」


 もう二度とあんな無様はさらさない。

 光音が安心して生活をおくれるように、俺が犯人を潰す。





「あれ? 兄貴達何してたんすか?」


「まぁ、いろいろな」


「初白さん、ごめん絆創膏貰える?」


「俺には湿布な」


「え? 良いですけど……二人ともなんでそんな傷だらけなんですか?」


「ちょっといろいろあってね」


「お前が手加減しねぇからだよ」


 別荘に戻った俺たちは帰るなり、初白から救急箱を出してもらい、互いの体についた傷の治療を始めた。

 みんなは何があったんだとしつこく聞いてきたが、正直に話すと色々面倒なのでごまかした。


「あ、島並さん私が湿布貼りましょうか?」


「え? あぁありがとう城崎さん」

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