第199話

「先輩」


「なんだよ」


「その……光音さんのこと狙ってたりするんですか?」


「はぁ? 何言ってんだお前?」


 狙ってるって言うのは恐らく付き合いたいのかと聞いているのだろうが、何を見てこいつはそんなことを思ったんだ?

 今日ほとんど一緒に居たからか?

 

「いや、なんかずっと気にしてる見たいなので……お嬢様を狙うのはやめた方が良いですよ、先輩には高嶺の花ですから」


「だから狙ってねぇって言ってんだろうが!」


「先輩は私くらいがちょうど良いと思いますよ?」


「なんでお前が出てくるんだよ」


「そ、それは……ほ、ほら先輩が何か勘違いをして光音さんに告白とか無謀なことをしないように、現実を教えてあげようかと」


「大きなお世話だ! 全く……」


 まぁでも、確かに光音は俺にとっては高嶺の花かもしれないな。

 あんなに綺麗でしかもお嬢様、絶対に俺じゃぁ釣り合いが取れない。

 城先さんもそうだ、可愛いし親御さんは医者、俺とは全然釣り合わない。

 

「……はぁ、お前の言うとおりかもな……俺にはお前くらいがちょうど良いのかも」


「へっ!?」


「何を驚いてんだよ、お前が言ったんだろ?」


「あ、あぁそうでしたね! あはは、私は先輩とかごめんですけどねぇー!」


「はいはい」


 俺だってごめんだっての。

 顔は良いけどこいつは性格がこれだからな。

 でも、こいつはきっとモテるんだろうなぁ。

 高弥には振られたかもしれないけど、こいつ自身は可愛いし、大島や悟の話しだと一年の間ではかなりモテるらしいからな。


「お前はモテそうでいいよね」


「そ、そう見えますか?」


「あぁ、見た目だけならな、性格を知っちまうとかなり残念だが」


「性格だって良いですよ! 先輩の前でだけこうなんです!!」


「なんでだよ……」


「でも、最近は先輩もモテるじゃないですか」


「んなことねぇよ、何を言ってんだ」


「あの動画が拡散されてから、先輩の株は急上昇ですからね」


「そんなの一時的なものだ、そのうち落ち着く」


「……まぁ、でも私もかっこいいと思いましたけど」


「は? お前何か言ったか?」


「何でも無いですぅ〜。そろそろ帰りましょうか」


「え? あ、あぁ……


 それから俺達は少し浜辺を歩いて別荘に戻った。


「少しは眠くなったか?」


「まぁまぁですかね、先輩も早く寝ないと明日起きれなくなりますよ?」


「もう明け方近いけどな」


 時刻はもう夜中の3時半を過ぎていた。

 もう少しで周囲が明るくなってくる時間だ。

 俺は初白にそう言いうと、大きなあくびをして自分の部屋に戻っていく。


「じゃぁまた後でな、俺はいい加減寝る」


「はい、おやすみなさいです」


 俺がそう言って部屋の中に入ろうとすると、初白が俺のTシャツを掴んで俺を止めた。

 

「あ、あの……」


「ん? どうした?」


「……私も先輩くらいがちょうど良いのかもしれません……」


「は?」


 初白は俯きながら俺にそう言うが、俺には何のことかさっぱりわからない。

 

「何を言ってんだお前?」


「べ、別になんでも無いです!! じゃぁおやすみなさい!!」


 初白はそう言って女子の部屋に入って行った。

 なんだったんだ?

 俺は不思議に思いながら、男子の部屋の入り自分のベッドに横になる。


「俺ぐらいがちょうど良いってなんだよ」


 距離感か?

 それとも扱いやすさか?

 まぁ、どっちにしてもなんかムカつくことを言われた気がする。

 さてと、少しは寝ておかないと体がおかしくなっちまうな。

 俺はそんなことを考えながら、ベッドに入って目を閉じた。

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