第192話

「まぁ、力の差を見せつけられたっていうかな」


「……この前の学校で事件?」


「あぁ、全く歯が立たなかった」


「平斗が? じゃぁ犯人はかなり腕の立つ奴だったんだね」


「だが、そんな相手を竹内さんは簡単に倒してたよ……俺の力不足だ」


「珍しいね、平斗が負けて落ち込むなんて」


「勝手に自分は竹内さんに勝てないだけで、世間一般からしたら強いと思ってたからな」


 まぁ、それも俺の過大評価だったわけだが。

 そのせいで俺は光音を危険な目に会わせた。

 だから、もう二度とこんなことが起きないように強くなりたかった。

 

「まぁ、そう言うことでお前にも手伝って欲しいんだ」


「良いけど、なんで僕なんだい?」


「竹内さんは忙しそうだからな、それにいろいろな相手に対応できるようにするための練習にもなる」


「なるほどね……そう言う事なら良いよ」


「悪いな」


「平斗と手合わせするのも久しぶりだしね」


 高弥とは昔何度から手合わせをしたことがある。

 結果は五分五分だったのを覚えている。

 高弥のおじいさんは剣術道場の師範をしていたらしく、高弥も昔から剣道をしていた。

 高校に上がってからは俺と同じく道場には顔を出していないらしい。

 そのことを高弥のおじいさんは勿体なく思っているらしく、会うたびに戻ってくるようにしつこく言われるらしい。

 高弥いわく「もうやる意味がない」とのことだが、こいつは今でも自分の竹刀や道具を部屋に大切に保管している。


「今回は平斗にコテンパンにされそうだ」


「良く言うぜ、本気なんてそうそう出さねぇくせに」


「あはは、そんなことないよ」


 そう言う高弥だが俺は知っている。

 こいつが本気を出せば、俺よりも強いことを……。


「そろそろみんなのところに行こうよ、僕らだけこんなところで休憩なんて寂しいだろ?」


「俺は別に良いんだが?」


「そんなこと言わずに行こうよ」


 高弥にそう言われ、俺は高弥と共にみんなのところに向かう。


「ん? お前ら何してんだ?」


「兄貴!!」


「た、助けてください島並さん!!」


 みんなのところに行ってみると、そこには砂浜に埋められた大島と悟がいた。

 砂浜に埋められて……。


「いや、お前ら何をしてるの?」


「助けてください兄貴!! 初白や姉さんたちが!!」


「なんか知らないけど俺達を埋めて遊んできやがるんです!!」


 あぁ、初白も光音もなんか変なスイッチ入っちまったみたいだな。

 なんかキラキラした目で二人の上に砂を盛ってる。


「うふふ、今日来た男子全員埋めてやりましょうよ」


「良いわね初白ちゃん、それで写真とって笑ってやろう!」


 あぁ、なんか茜さんもノリノリだな。

 しかも砂って結構重いから動けないんだよなぁ……。

 てか、俺達もここに居たら危ないのでは?


「そ、そうか……ま、まぁ頑張れよ」


「兄貴! 見捨てないで!!」


「悪い……」


「兄貴ぃ!!」


 すまん大島、俺にはこいつらを止められない。

 危険を感じた高弥もいつの間にかどこかに逃げて行ったし。

 俺もさっさとこの場を離れて……。


「……どこ行くの?」


「え?」


 俺がその場を離れようとしていると、光音が俺の腕をがしっと掴んできた。


「寝て……」


「断る!! また埋める気か!!」


 もうあんな思いをするのは嫌だ!

 俺は光音の腕を振りほどき、急いでその場を離れようとする。

 しかし、俺が光音の腕を振り払った瞬間、背後から俺は誰かに足を掛けられ、そのまま地面に倒れ込んだ。


「お嬢様、今です」


「や、山ノ内さん!?」


「ありがと」


 そう言いながら光音は俺の上にスコップで砂を乗せていく。


「ば、馬鹿やめろぉぉぉぉ!!」


 結果、砂浜には三人の男が埋められ女子に弄ばれた挙句にその場に放置されてしまった。

 

「なんでこんなことに……」

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