第193話
*
「酷い目にあったな」
「うち女性陣って強いっすね……」
「香奈まで……」
俺と大島、悟の三人はあれから一時間ほど砂に埋められた。
旅行先だからと言って、初白も茜さんもはしゃぎ過ぎだと思う……。
現在、俺たちは別荘に戻って夕飯のバーベキューの用意をしようとしていた。
「食材はこちらです」
「うぉ! なんだこの高そうな肉……」
「兄貴、このオレンジ色の木箱に入った奴なんですか?」
「それはウニだな……てか、バーベキューにウニって」
「皆様の好みがわかりませんでしたので、いろいろ準備させていただきました」
「なるほど」
「えぇ、ちなみにウニは私が好きなので入れました」
「私欲丸出しだな……」
大きな冷蔵庫の中身を一通り見た後、男四人でバーベキューの準備を始めた。
とは言っても調理は女子に頼み、俺ったち男子は火を起こすことになった。
「高弥、炭もう少しくれ」
「わかったよ」
「サンキュー」
別荘には立派なウッドデッキがあり、そこから海を一望することが出来た。
「兄貴すごいっすね! 俺こんな豪華な旅行初めてっす!」
「いや、多分ここにいる奴のほとんどがそうだと思う」
「これも平斗と友達だったおかげかな? 貴重な経験をさせてもらってありがとう」
「礼なら光音に言ってくれ、俺は何もしてねぇ」
俺はそう言いながら炭の様子を見て火に風を送る。
それにしても女子達は何をしているんだ?
下ごしらえなんか早くに終わりそうだが……。
そんなことを俺が考えていると、部屋の中から黒い煙が立ち込めてきた。
「な、なんだ!?」
「れ、蓮華ちゃん! 早く火を止めて!!」
「う、うわぁ! 焦げちゃった! どうしよう!!」
「あ、茜さん! なんですかそれ?」
「玉ねぎをむいてたんだが……なくなってしまった」
「そんな古典的な!」
部屋から聞こえてくる女性陣の話を聞きながら俺達男性陣は青い顔をして全員でこう思っていた。
食える物は出てくるのだろうか?
「お待たせ……」
「ん? 光音か……肉持ってきてくれたのか?」
「そう、私が切った」
「あぁ、切るだけならまぁ……焦げたりはしないよな……」
「なんで?」
「いや、なんでもない」
「は、早く焼きましょうよ兄貴!」
「そ、そうだな、初白達もそのうち来るだろうしな!」
早く肉を食って腹をいっぱいにしよう。
そうすればあいつらの下ごしらえした食材に手を付けなくて済む!
しかし、現実は厳しい。
「おい平斗!! この焼きおにぎりを焼いてくれ!」
「いや、既に焼きおにぎりみたいになってますが……」
茜さんが持ってきたおにぎりはなぜか既に真っ黒になっていた。
「先輩! じゃぁ私のこのお肉を!」
「だからなんで真っ黒なんだよ! ダークマターか!!」
「下ごしらえだから少し火を通した方が良いかと思って」
「とりあえずお前と茜さんはもう台所に立つな」
俺は二人の代わりに台所を手伝いに行った。
台所には城崎さんと山ノ内さん、そして篠崎が居た。
「あれ? 島並先輩どうしたんですか?」
「いや、あの二人に調理は無理だ俺が変わる」
「あら、料理が出来る男子アピールですか?」
「なんでですか、ここでアピっても仕方ないでしょ?」
「確かに島並先輩既にモテモテですからねぇ~」
「篠崎、何を寝ぼけた事言ってるんだ?」
「え? 普通にモテますよね? だって、あの動画が出回ってから女子の間で先輩の株急上昇ですし」
篠崎がそう言った瞬間、後ろで野菜を切っていた城崎さんの野菜を切る音が止まった。
「何言ってんだ、そんなわけねぇだろ?」
「でも、私結構先輩の連絡先聞かれますよ? 自分で聞いてって断ってますけど」
その篠崎が言った瞬間、城崎さんが野菜をまな板から落とした。
「城崎さん、大丈夫?」
「だ、大丈夫ですよ! そ、それより話の続きを!」
「なんで?」
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