第176話
*
「竹内さん」
「ん? どうした平斗」
光音のボディーガード期間が終了した次の週。
俺は道場に来た竹内さんに声を掛けた。
「どうやったら今よりも強くなれますか?」
「なんだ急に? バトル漫画の主人公にでもなりたいのか?」
「いや、そう言うわけではなく……竹内さんにどうやったら追い付けるかを聞きたいんです」
「そう言われてもなぁ……まぁ鍛錬あるのみじゃないか?」
「鍛錬……それだけでは限界があるんじゃ……」
「まぁ確かにやり方なんかを知らないと強くはなれないだろうな、だが焦る必要はないぞ。何をどう頑張ったって急に強くなんかなれねーよ、そう言うのは日々の積み重ねだ」
「じゃぁ、竹内さんの鍛錬方法を教えてください!」
「俺の鍛錬か? いや、いくら平斗でも多分ついてこれねぇよ。それよりも……」
「な、なんですか?」
竹内さんはそう言うと懐から何か紙切れを取り出した。
「俺の代わりに無人島に行ってきてくんね?」
「……はい?」
そう言って竹内さんに無人島旅行のパンフレットを渡してくる。
急にこの人は何を言っているのだろうか?
強くなることを考えすぎて馬鹿になってしまったのだろうか?
まぁ、元から少し馬鹿だけど……。
「あ、あの……言ってる意味が分からないんですけど……」
「いやぁ~実は山ノ内が俺やみんなも一緒にって誘ってくれたんだけど、俺は大会とかいろいろあっていけないんだ、折角だし平斗がみんなを誘って行ってきてくれよ」
「あぁー……いや、多分これは……竹内さんが行かないと意味がない気が……」
「俺が? なんでだ?」
「いや、それは言えませんけど……」
きっと山ノ内さん、竹内さんとの距離を縮めようと思って企画したんだろうなぁ……本人は全く気が付いてないけど……。
「確か平斗も山ノ内の連絡先知ってるだろ? 連絡取っておくからあとは山ノ内と打ち合わせして言って来いよ。あのお嬢様も一緒だろうし、みんなで遊んで来い、折角の夏休みだろ?」
「は、はぁ……」
「じゃ、俺はこれからバイトだから」
そう言って竹内さんは道場を後にしてしまった。
無人島ねぇ……てか、俺や他の奴らが行っていいものなんだろうか?
山ノ内さんはきっと竹内さんが来ないとこの旅行の意味がないんじゃ……。
その一時間後、竹内さんから話を聞いたのであろう山ノ内さんから俺のスマホに連絡がきた。
『……話は聞きましたか?』
「あからさまにがっかりしてますね」
『竹内君が来ないなら、正直私はこの旅行をに行く意味がないので……』
「正直ですね……じゃぁ中止します?」
『いえ、この旅行にはお嬢様に友人を増やすという目的も含まれています。島並さまのご友人も一緒で構いませんので、出来るだけ大人数で旅行に来てくださいませんか? 食事や宿泊先はこっちですべて手配しまうすので』
「まぁ良いですけど……本当に良いんですか?」
『えぇ、構いません。しかし出発が明後日なので急な話になってしまいますが……』
「まぁ……どうせ暇そうなやつらばっかりなんで多分大丈夫じゃないでしょうかね?」
悟や大島は毎日欠かさず道場に来るくらいだから暇だろうし、城崎さんも特に予定はないと言ってたしな……あとは茜さんと真奈美さん……大島は彼女も連れてくるだろうしな、あとは高弥と……。
「……初白も呼んでみるか」
『え? 何か言いました?』
「あぁ、いえこっちの話です。それじゃぁ人数が決まったら連絡します」
『よろしくお願いします』
そう言って山ノ内さんは電話切った。
俺は直ぐに旅行に行きそうな奴に連絡をつけ始める。
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