第177話

 まずは大島と悟の二人。


「え!? 無人島に旅行ですか!」


「あぁ、実は俺がバイトで行ったお屋敷から招待されてな、大人数で来てくれってことだったし、お前らもどうだ? まぁ、話が急で悪いんだが」


「俺は大丈夫です! 兄貴の行くところどこでもお供します!!」


「俺もです! 島並さんが行くなら行きます! あ、あの香奈も良いですか?」


「おまえらの事だからそう言うと思ったよ。悟、彼女も連れてきて問題ないぞ」


「いやぁ~楽しみですねぇ~青い海に白い砂浜……そしてタイヤで特訓する俺達……」


「そんな特殊な特訓するつもりはねぇよ……」


予想通りではあったが、二人はやっぱり来るか。

 香奈も来るようだし、次は茜さんと真奈美さんか。

 俺は二人を探しに道場に向かった。

 確かさっき二人で何か話しながら道場に向かっていたはずだが……。


「あ、居た。茜さん」


「ん? あぁ平斗かどうした?」


「いや、お二人こそ何をしてるんですか……」


「「美肌パック」」


「道場でパックをしないでください……」


「もう稽古は終わりでしょ? 早めのお肌ケアが私達女子には必要なのよ」


「そう言う事よ平斗」


「へぇ……女子ですか……」


 ナンパしてきた男を返り討ちにするような人を女子とは呼びたくないな……。


「あ? なんか平斗、今失礼な事を考えなかった?」


「いえ、何も! それよりお二人にお話しがあって」


「え? 焼肉でも奢ってくれるの?」


「真奈美さんは一体俺を何だと思ってるんですか?」


「都合の良い財布」


「アンタの中で俺はどんな立ち位置なんだ……」


 俺は先ほど大島と悟に話したように無人島に行く内容を二人に話す。


「え!? マジで! 良いの!?」


「は、はい……先方も人数は多い方がいいからと」


「やったわね茜! これで買った水着が無駄にならないわ!」


「あぁ! これで水着を平斗の馬鹿に……」


「俺になんですか?」


「っつ! な、なんでもねぇよ!」


「っと! いきなり殴りかからないでくださいよ」


 顔を真っ赤にして俺を殴ろうとしてくる茜さん。

 なんだかわからないが、とりあえず俺を殴るのはやめてほしい。

 昔と違って今は普通に痛いし。


「まぁ、急な話なので無理はしないでください」


「何を言ってるのよ! こちとら高校最後の夏に何もなくて暇だったのよ! もちろん行くわ! 言ってナンパされまくりよ!」


「真奈美さん、行くのは無人島です。俺達意外いません」


 まぁ、なんか乗り気だし。

 真奈美さんと茜さんも問題はないだろう。

 あとは……。


「えっと城崎さんは……」


 俺は道場で声を掛ける最後の相手、城崎さんを探して道場内を歩いていた。

 確か、稽古が終わってすぐにどこかに行っていたが……。


「もしかしてシャワールームか?」


 俺はそんなことを考えながら、シャワールームの方に向かった。

 最近、城崎さんはなぜか稽古が終わると一目散にシャワールームに行く。

 まぁ、夏だし早く汗を流したい気持ちもわかるが……。

 シャワールームは男女三か所ずつ存在する。

 道場に来る門下生が多い場合は合計6か所すべて解放するのだが、今日のように門下生の数が少ない場合は片方ずつ解放する。

 節水と掃除の関係なのだが、その場合は扉に「男子使用中」または「女子使用中」という札を掛けておくのだが……。


「あれ? 札がない? もしかして城崎さん上がったのか?」


 俺はそんなことを考えながら、何も考えることなくシャワールームのドアを開ける。


「え……」


「ん? え……」


 この時俺は札が無くてもドアをノックするべきだと強く思った。

 その理由は、ドアを開けた先に下着姿の城崎さんがタオルで頭を拭きながらこちらを見ていたからだ。

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