第173話



「痛いっす……」


「あたりめぇだ、怒ってんだから」


「すいません……」


 竹内さんに助けられた後、俺は頭に大きなたんこぶを作り、覆面を脱いで竹内さんと話していた。

 話をしながら俺は捕まっていたお嬢様の縄をほどく。

 

「大丈夫か?」


「……うん……」


 お嬢様の目はすっかり涙で真っ赤になっていた。

 不安にさせてしまった。

 俺はこの子のボディーガードなのに……。

 竹内さんが居なければ、俺はこの子を助けることが出来なかった。

 強くなった気でいた。

 竹内さんには及ばずとも俺は自分を強いと過信していた。


「ごめんな……不安にさせちまった……」


 そう言うと彼女は俺の服を強く掴み、泣きながらこういった。


「……無事で……良かった……」


「………ごめん」


 俺は依頼主に何を心配させてるんだ……本当なら俺はこの子を守らなきゃいけないのに……。

 程なくして警察と山之内さん達が到着した。

 襲撃した黒ずくめの奴らは全員逮捕され、俺や竹内さんは警察に事情を聴かれることになった。

 

「島並さん! 竹内さん!!」


「あ、城崎さん」


「よっ! 無事かい?」


「はい、島並さんが助けてくれたので」


 外に出ると城崎さんが目に涙を浮かべながら駆け寄ってきた。

 彼女にも心配をかけてしまった。


「あ、あの大丈夫ですか? 島並さん頭に大きなこぶが……」


「あぁ、これは……大丈夫」


「本当ですか? 頭蓋骨にヒビとか入ってるんじゃ……」


「あぁ、城崎ちゃん大丈夫大丈夫。ちゃんと手加減したから」


「え?」


 この人の手加減は本当に手加減なのだろうか?

 俺たちは怪我の手当てを受け、警察に事情を話した。

 お嬢様も怖い目に会い、警察からのメンタルケアを受けていた。


「お嬢様!!」


「……山之内さん」


「お怪我はありませんか!? 申し訳ありません……私が付いていながら……」


 本気で心配している山之内さんを見るのは初めてだった。

 目からは涙を流し、お嬢様の手をぎゅっと握っている。


「申し訳ありません……私が……私が居れば……」


「大丈夫……彼が助けてくれたから……」


 お嬢様はそう言って俺の方を見てほほ笑む。

 助けてなんかいない。

 助けたのは竹内さんだ、俺はただ危険に足を突っ込み、みんなに心配をかけただけだ。

 自分の力を過信しすぎた俺は、ただ悪戯に場を荒らしただけだ。


「島並様……ありがとうございます。旦那様に代わりお礼を申し上げます」


「……お礼なら竹内さんに言ってください……俺が何も……」


「あれ? 山之内じゃん、久しぶりだな!」


「え……あ……竹内君?」


「え?」


 俺が山之内さんと話をしていると、竹内さんが話に入ってきた。

 どうやら知り合いのようだが、一体どういう関係なんだろうか?


「久しぶりだなぁ~大学でもそんな会わないし、お前の仕事って本当にメイドさんなんだな、似合ってるぜ」


「あ……ありがとう……それと……お、お嬢様を助けてくれて……」


「良いってことよ、俺の弟分も世話になってるみたいだしな」


 なぜか顔を真っ赤にする山之内さん。

 楽しそうに話をする竹内さん。

 マジでこの人たちどんな関係なんだ?

 

「あ、あの竹内さん、山之内さんとはどんな関係なんですか?」


「どんなって……同じ大学なんだよ」


「え!?」


「まぁ、俺は道場あるし、山之内はメイドの仕事をしてるから会うのはかなり久しぶりなんだけど、高校も一緒でな」


「そ、そうなんですか……」


 なるほど、それで二人は知り合いだったのか。

 しかし、竹内さんがやってきてから山之内さんの様子がおかしい。

 顔は真っ赤だし、なんかモジモジしてるし……。

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