第170話

「………」


「てめぇ……本当に俺たちの仲間か?」


 仲間割れだろうか?

 リーダーの男が突然入ってきた男を見てそういう。

 聞かれた男はため息を吐くと先程のように話始めた。


「頭〜仲間の顔を忘れるなんてひでぇ〜な〜、俺だよ俺! それよりも今は早く侵入者を!」


「………白を切るつもりか?」


 そう言ってリーダーの男は入ってきた男に対して銃を向ける。

 

「さっさとその覆面を脱げ、お前は怪しい」


「………」


「か、頭……まさかこいつ……」


「あぁ、その侵入者はこいつかもしれねぇ」


 リーダーにそう言われ、男たちは後から入ってきた男を取り囲む。

 すると、取り囲まれた男は再びため息を吐き、口調を変えて話始める。


「はぁ……上手く行くと思ったけど、やっぱりだめか……」


「じゃ、じゃぁやっぱりおまぐはっ!!」


「て、てめぇ!!」


 後から入ってきた男は虜囲んでいた男一人を殴って気絶させ、盾にした。


「おい、撃ったらこいつに当たるぞ」


「く、くそっ!!」


「どうやら俺の予想は当たったようだな……何者だ? どうやってここまで侵入してきた?」


「答えるといろいろと面倒なので、答えたくないねぇ。なんでも良いけど、さっさとその子の事開放してもらえる?」


 もしかして私を助けに来てくれたのだろうか?

 でも、一体誰だろう?

 覆面で顔がよくわからないし、声も覆面のせいで籠もっていて良く聞こえない。

 しかも相手は三人だし、銃も持っている。

 一人で大丈夫なのか心配になってくる。


「一人で乗り込んでくる度胸は褒めてやろう……だが、お前はここで死ぬ」


「へぇ……死体処理は大変じゃないのか?」


「そういうのは俺たちの依頼主が全部やってくれるんでなぁ……まぁ、あんまり死人は出すなと言われたが、仕方ないだろう」


「良いのか? この状態だと仲間に当たるぞ?」


「まぁ、お前を仕留めるためだ仕方ねぇなぁ!!」


 そう言ってリーダーの男は銃の引き金を引いた。

 

「っち!」


 しかし、後から入ってきた男の人は盾にしていた男を捨て、横に飛んで銃の球を避けた。

 

「ほぉ……お優しいことだな、自ら盾を捨てるなんて」


「まさか本気で撃ってくるなんてなぁ……お前の仲間じゃねぇのかよ」


「仲間さ……だが、仲間一人の犠牲で俺たちは安全に依頼をこなせるんだ、安いものだろ?」


「外道が……」


「さぁ、これで俺たちは更に優位に立った、どうする? 泣いて命乞いをするか? それとも無様に足掻いて死ぬか、選ばせてやる!」


「どっちも嫌だね!!」


「あがっ!」


「ぐはっ!!」


 私を助けに来たのであろうその人は銃を恐れる事無く、黒ずくめの男たちに向かっていった。

 一人、また一人と敵を倒し、最後はリーダーとの一騎打ちにまで持ち込んだ。

 見ていてだんだん誰なのか私はわかり始めていた。

 まさか本当に来てくれるなんて……私は思わず目から涙を浮かべていた。

 いつも彼は私が助けを求めた時に来てくれる。

 絶対に助けになんかこないと私が思っても彼は来てくれた。

 覆面をしていても彼の動きを私は覚えていた。

 彼は間違い無く島並平斗さんだ。





「ほぉ……なかなかやるようだな」


「それはどうも……そろそろアンタも眠ってくれよ」


 俺は覆面のを被り敵のリーダーと思われる男にそういう。

 本当は敵の仲間になりすまして、こいつらをお嬢様の元から離してから救出するつもりだったが、まさかこのリーダー各の男が仲間の特徴を把握していたなんて……。


「お前、声の感じからしてまだ若いな……一体どこでそんな力を身に付けた?」


「答える義務はないね、さぁ……さっさと返して貰うぞ……お嬢様を」


「なるほどな、このお嬢様のボディーガードか……それでここまで一人で来たのか。大した忠誠心だねぇ〜」

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