第167話

『先ほど、学校の先生から学校を離れるように言われまして……不自然と思いましたが、そう言う事でしたか……』


「出来るだけ早く戻ってきてください! 警察には連絡しましたけど、お嬢様に何かあったら……」


『わかりました、とりあえず島並様は待機をお願いします』


「はい、ところで……」


『なんですか?』


「俺の存在忘れておいて行きましたよね?」


『………』


「おい、なんか言え」


『それでは待機をお願いしまう』


「あ、コラ! 切りやがった……」


 くそ、なんかいい感じにはぐらかされた感じがする……。

 まぁ、今はそんなことはどうでもいいか……山之内さんにも待機とは言われたけど、こいつらを倒しちまったしなぁ……このままだと異変に気が付いたこいつらの仲間がここに来るかもしれないし、とりあえずお嬢様と城崎さんの無事を確認に行くか。

 でも、あんなことがあった後でまた危険に自分から足を突っ込むと、父さんと母さんにまた心配をかけるか?

 でも、二人の事は心配だし……。

 

『……俺に言え、協力してやる』


「……竹内さん」


 また何かあったとき相談しろとは言われていたが……こんなことでも良いのだろうか?

 でも、竹内さんなら俺が今どうするべきなのかを教えてくれるのかもしれない。

 また、俺の安易な判断で誰かに心配をかけるのは嫌だ。

 俺は竹内さんに電話を掛けた。


『もしもし?』


「竹内さんですか? 実は……」 


 俺は竹内さんに現在の状況を説明した。


『なるほど……それでお前は今どこに居る?』


「学校の裏門に居ます」


『よし、じゃぁ待ってろ、俺も行く。それまでそこを動くなよ』 


「わかり……」


 そう言おうとした瞬間、俺の背中に何か固い物が当たった。


「おい、お前」


「………」


『おい、平斗! どうした!』


 俺はゆっくりと後ろを振り向く。

 

「お前……こいつらをやったのか?」


「………いえ、実はこの人たちが倒れていたので、救急車を呼ぼうと……」


 俺はそう言いながら通話を切った。

 後ろを振り向くとそこには黒づくめの男が俺に何かを突き付けて立っていた。

 本当に俺は背後に意識がいかないな……。

 おそらくだが、この男が俺に向けているのは拳銃だろう。

 さて……どうしたものか、拳銃を持った相手となんて戦ったことはないが……それともこのまま白を切るか?


「嘘つくな……どこに電話をしていた?」


「あぁ、バレてるのね……なら!!」


 俺は男の腕を思いっきり叩き落とし、拳銃を地面に落とさせる。


「しまった!」


「遅い!」


「あがっ……あ……」


 俺は拳銃を拾おうとした男の腹に自分の拳をめり込ませる。

 男はそのまま意識を失い、地面に倒れた。


「拳銃を相手にするのは初めてだぞ……」


 このままではどんどん裏門にこいつらの仲間がやってくるかもしれない。

 一旦ここを離れた方が良いか?

 そう考えているときだった。


「いや!! 離して!!」


「大人しやがれ!!」


 近くから女の子の声が聞こえた、

 会話の様子から俺はその声のした方に足を進める。

 父さん母さん、そして竹内さん……ごめん、やっぱりじっとはしてられないよ……。

 俺は声のした方に向かった。


「いや! やめて!」


「へへ……流石はお嬢様学校、なかなか上玉が揃ってるなぁ~」


「おいおい、遊ぶなら少しだけにしろよ、さっさとずらからねぇと警察が来るぞ」


「わーってるよ! しっかし、最近のガキは発育が良いなぁ~」


「や、やめて……お願い……します……」


「いいねぇ~そう言うのがそそるんだよぉ~「


 そこには黒づくめの男が二人と女の子が一人いた。

 男は女の子を押さえつけ、女の子の服に手を掛けていた。

 俺はその光景を見た瞬間、どうしようもない怒りが心に沸いた。

 それだけなら俺はまだ少しは冷静でいられたのかもしれない。

 だが、その女の子が城崎さんだったからなのだろうか……俺は考えるより先に体を動かしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る