第166話
なるほど、それでこんな挙動不審だったのか……。
俺はスマホにわかりましたと打って男の人に見せる。
男性は安心した表情で俺が来た方向に歩いて行った。
おそらくマイクか何かを付けられて余計なことを言えないようにしているのだろう。
待てよ……ならなんで俺に学校のトイレを教えたんだ?
中の奴らに聞かれたら、助けを呼ばれたと思うんじゃないか?
本当なら俺を遠ざけるために別なところに行けというはずだし……。
「もしかして中の奴ら……裏口で待ち伏せとかしてたりするのか?」
まぁ、とりあえずまずは警察に連絡だな。
そんでもって……一応中の様子を調べに行くか。
あのお嬢様も心配だが、中には城崎さんも居る、警察の到着を待っている間に何かあったら大変だ。
「さーて……トイレに行くか」
俺はそんな独り言をつぶやき、裏口から中に入ろうとした。
すると、案の定入り口の警備員に止められた。
「おい、この先は関係者以外立ち入り禁止だぞ」
「あぁ、すいません! ちょっとトイレを借りようと思いまして……先ほどこの学校の先生にも許可をいただいたんですけど……」
「許可証が無い者を入れるわけにはいかない。別なトイレを探せ」
この警備員……不自然に胸元が膨らんでいるな……もしかして中に何かを着込んでいるのか?
いや、警備員ならそれは当たり前か……だが、先ほどの男性教師の感じからするとこの警備員はもしかして偽物か?
「あぁ、そうですか。ところで警備員さん、ここの警備に私の兄が居るのですが……」
「そうなのか? 兄貴に何か用事でも?」
「えぇ、実は忘れ物をついでに届けようと思ってまして……ここの警備責任者をしているらしいので、名前はご存じかと思うのですが……島並という警備員を読んでいただけますか?」
「あ、あぁ……島並さんの弟さんか……ならその忘れ物は俺が届けてぐはっ!!」
「お、おい! おまうがっ!!」
「ここの警備責任者に島並なんてやつ居ねーよ」
俺はこの警備員が嘘をついていることを知り、偽警備員二人を殴って気絶させた。
調べてみると、ハンドガンを隠し持っており、警備員の制服の下には防弾チョッキを着こんでいた。
「警備員が全員入れ替わってるのか……」
警戒が厳しい中をどうやって中に入ったのかと思ったが……まさか警備している警備員が全員敵になってるなんて……。
とりあえず、ここは山之内さんに連絡を……。
そう思ってスマホを取り出すと、山之内さんからメッセージが来ていた。
【どこに居ますか?】
もしかして山之内さんの方でも何かあったのか?
俺はそう思い、山之内さんに電話を掛ける。
「もしもし! 山之内さん実は大変なことに……」
『そちらもですか……』
「え? じゃぁ山之内さんも」
『はい、まさかこんなことになっているなんて……』
良かった、山之内さんも騒ぎに気が付いているようだ。
これなら話は早いぞ……。
『まさか……まさか……引退なんて!!』
「………ん?」
『これからどうするんですかねぇ……この子が抜けたらこのグループやっていけないと思うんですよねぇ~、ネットでもみんな言ってるし』
あ、これ違う……あのアホメイド、この大変な時にネットでニュース見てやがる。
「あのですねぇ! こんな大変な時に何をやってるんですか!!」
『ニュースは細かくチェックしておかないと、社会人の基本です』
「そんな場合じゃないだろ! 今、学校内に黒ずくめの怪しい奴らが侵入しているらしいです! 警察には連絡しましたが、ボディーガードの方々を早くこちらに向かわせてください!」
『それは本当ですか?』
「はい、実際裏門のボディーガードは偽物でした」
『そうですか……では我々はまんまとやられたわけですね』
「え? どういうことですか?」
『申し訳ありません島並様、我々は現在屋敷に戻っている最中です。しかも学校からかなり離れてしまいました』
「な、なんですって!?」
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