第161話
「なかなかやりますね、寝ている女の子の部屋に入るなんて」
「アンタが入れて言ったんだろうが!!」
ドアから顔だけだしてそういう山ノ内さんに文句を言い、俺はお嬢様が着替えを済ませるのを待った。
時刻は11時30分。
随分遅いお目覚めだ、まぁ夏休みだしお昼まで寝ていたい気持ちも分かるが……。
「島並様、お嬢様の準備が出来ましたのでどうぞお入り下さい」
「あぁ、はい」
数分後、山ノ内さんにそう言われ俺は部屋の中に入っていった。
部屋の中には着替えを済ませたお嬢様がジト目で俺を見ていた。
気まずい……まぁ、無理もだいだろう、寝起き姿を男に見られたのだ。
「えっと……今日から再びお世話になります島並です」
「……変態」
「なっ!」
「それでは今後は島並さまは変態とおよびすることにしましょう。おい変態、ちょっと焼きそばパンかってこいよ」
「なんでそうなるんだよ! てか、なんで使いっぱしりみたいな扱い!?」
「お嬢さまがそうしろと」
「マジで! いったの?」
「言ってない……」
「おいこら嘘付いてんじゃねぇ!」
「……でも良い」
「でも良いって何!? いや変態なんて呼ばれるの絶対嫌だからな俺!」
「それでは少し変えて変人と言うのはどうでしょう?」
「誰が変人んだ! どっちかっていうとアンタだろ!」
「失礼な! 私はただの美人メイドです」
「そういうところが変人だって言ってんだよ……」
そんな言い争いから俺のバイト生活は始まった。
お嬢様は基本的に一日の大半を自室で過ごす。
偶に部屋から出るときはちょっとした買い物に行く時や、日課のランニングをする時くらいらしい。
「それでは私は失礼いたします。島並様はお嬢様をお願いいたします」
「え? 山ノ内さんは?」
「私はこれから別件がありますので、それではよろしくお願いします」
「あ、ちょっと!!」
山ノ内さんはそう言って、さっさと部屋から出ていってしまった。
残されたのは口数の少ないお嬢様と俺だけ。
何をしたら良いのかも聴いてないのに……てかこの子と会話なんて出来るのか?
「ねぇ……」
「え? あ、俺か。どうかしたか?」
「………ここ座って」
「え? あぁ、まぁ良いけど」
俺はお嬢様に呼ばれお嬢様が座っている椅子の隣にやってきた。
お嬢様の目の前にはパソコンのモニターが上3つ下3つの合計6個モニターがある。
「何をしてるんだ?」
「……色々」
「そうか……それで俺に何をしろと?」
「練習……付き合って」
「え?」
お嬢様はそう言って俺にコントローラーを差し出してくる。
お嬢様の目の前のモニターには格闘ゲームの画面が写し出されていた。
「え? 格ゲー?」
「うん……」
「ま、まぁ……良いけど……俺の仕事ってこんなのでいいの?」
「良い」
「良いのかよ……」
まぁ本人がそういうのだから良いのだろう。
俺はお嬢様の隣に座って、ゲームの相手を始めた。
「あ! なんだ! え? 動け! ない……」
「弱い……」
「そ、そんな目で見るな! あんまり格ゲーはやった事ないんだよ!」
あまり俺が格闘ゲームをしないというのは本当なのだが、それを抜きにしても彼女は強かった。
まるで動画サイトで見るプロゲーマーのような動きだった。
「山ノ内さんは強かった」
「マジかよ……俺あの人以下なの……」
なんかそれはそれで悔しいな。
てか、このお嬢様から見て強いってことは山ノ内さんはどんな強さなんだよ。
俺を投げられるほどの力といい、あの人は一体何者なんだ?
てか、早く帰ってこいよ。
「もう一回」
「え? 相手になるのか?」
「まぁ多少……」
「なっ! よ、ようしわかった……絶対にアンタから一勝してやる!」
「やれるもんなら……」
このまま舐められたんじゃ収まらない。
俺はその後もお嬢様と対戦をした。
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