第156話



「え!? 瑠香ちゃんと映画!?」


「いきなり大きな声出すなよ」


 城崎さんと映画に行った次の日。

 俺は初白に朝から電話で呼び出され喫茶店に来ていた。

 朝っぱらから電話で呼び出してくるので何かと思えば、ただ暇だったから暇つぶし相手が欲しかったと言われ、俺は若干初白に怒りを覚えていた。

 なんでこいつはこうなんだろうか……。


「な、なんでですか?」


「なんでって、誘われたからだよ」


「くっ……先を越された……」


「はぁ? 何言ってんだ?」


「な、なんでもないです。罰として今日は一日私に付き合って下さい」


「いや意味がわからん」


「どうせ暇ですよね?」


「帰るわ」


「あぁぁ!! ごめんなさい! 冗談ですよ!!」


「何が冗談なんだよ」


 相変わらずだなこいつは……。

 と言うかこいつちゃんと宿題とかやってるのか?

 まぁ良いや、俺が心配することじゃないし。


「それにしても……」


「なんだよ」


 初白はそう言いながら、俺の方をじーっと見てくる。

 なんだ?

 俺の服装でも気になるのか?


「なんか毎回同じような服ばっかりきてませんか?」


「え? そ、そうか?」


「そうですよ! なんか地味っていうか……変じゃないけどぱっとしないっていうか」


「別にいいだろ、それにお前に合うだけだし適当で良いかと思って」


「あの先輩? 私が美少女な後輩っていう認識あります?」


「誰だそれ? どこに居るんだ?」


「うわぁ〜今先輩の事をグーで殴りたくたりましたぁ……」


「まぁ、落ち着け」


 俺はそう言いながら注文したコーヒーを飲む。

 しかし、それと俺の服装が一体なんの関係があるって言うんだ?


「良いですか? 可愛い女の子と合う時は別にその子が好きじゃなくても、男性はオシャレをして合うべきです」


「じゃぁ大丈夫だな、俺今日はは可愛い子と会わないから」


「せんぱーい、そろそろお冷ぶっかけますよぉ〜」


「わ、わかった……悪かった、だからその手に持ったコップを置け」


 やばい、少し言い過ぎたな。

 でも、確かに初白の言うとおり、俺の持っている服は同じようなのばかりかもしれない。

 最近服を買って無いし、折角だから夏用の服を買いに行ってもいいな。


「まぁ、そういう訳で私が先輩の夏服をコーディネートしてあげますよ!」


「いや、別に俺一人で買いに行くから良いんだけど……」


「さぁ! じゃぁ早速行きましょう!!」


「だから一人で……はぁ……」


 行っちまった。

 しかも勘定を俺に任せて……。

 くそっ……これだからあのアホは……。


「ありがとうございましたー」


 俺は仕方なく代金を変わりに支払い、初白を追いかけた。


「おい、ちょっとまて!」


「え? なんですか?」


「買うのは百歩譲って良いにしても、あんまり高いのは無理だぞ?」


「大丈夫ですよ、中高生のお小遣いでも安心して帰るHUに行きますから」


「まぁそれなら……」


 あそこの商品ならいくら高くても1万円を超える商品はそうそう無いし、なんとかなるか……。

 そういえば、初白は毎回違う服を着ているな……。

 今日の服も見たことがない……とは行ったものの、そういえば数えるくらいしかこいつとプライベートであった事ないな。


「な、なんですか? ジロジロこっちを見て……セクハラですよ」


「あーそうだねー。オマエガカワイクテミトレテタヨー」


「絶対嘘ですよね? 目が泳いでるし、めっちゃカタコトだし!」


「良いから行くぞ、さっさと済ませて俺は帰る」


「あ! まって下さいよぉ!」


 こうして急遽、俺は初白に私服を選んでもらうことになってしまった。

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