第155話

「カップルばっかりだな……」


「そ、そうですね……わ、私達も周りからはそう見えてるかもしれませんよ?」


 そういうもんだろうか?


「それだと城崎さんには悪い事をしているかもな」


「え? な、なんでですか?」


「俺みたいなのが彼氏と思われるは嫌だろ?」


「そ、そんな事ありません!!」


 やっぱり城崎さんは良い子だなぁ……。

 ちゃんと俺に気を使ってくれてる。

 これが初白だったら……。


『うわぁ……先輩とカップルとか最悪です。慰謝料を請求します』


 なんて言うんだろうな。

 

「ありがとう、でも俺は城崎さんとならカップルに間違われるのも悪くないかな?」


「へぇ!? そ、それはど、どういう……」


「あ、映画始まるよ」


「え? あ……は、はい……」


 始まった映画の主人公は俺たちと同じ高校生だった。

 主人公の男子生徒がうざい後輩に毎日振り回されながらも、日に日に違いを異性として意識し始め、お互いに好きになっていく物語なのだが。

 この後輩キャラがどことなく初白に似ているせいか、俺はこの後輩キャラを好きに馴れなかった。

 二人は好き会っているが、色々なトラブルや壁が邪魔をしなかなか付き合わない。

 ようやく告白するかと思ったら、主人公の親友が邪魔に入るし、なんだか見ていてすこしイライラする。

 好きなら好きと言ってしまえば良いものを……。

 そして、色々あり最後は二人の結婚式で終わった。


「面白かったですね」


「そうだね、あのヒロインは好きになれないけど」


「最後の最後まで主人公をからかってましたね」


「まぁ、そういうキャラが許されるのは映画の中だけだよな」


 そう言いながら座席を立って帰ろうとすると、またしても見慣れた背中を見つけた。


「まさか……あいつは」


「え? どうしたんですか?」


「いや、恐らくだが……」


 俺はその背中を追いかけ、肩を叩いて声を掛ける。


「え……って兄貴!?」


「よ! お前も映画見てたのか……てか、なんで号泣してんだ?」


「だ、だって良い話……だったじゃないっすか!!」


「うん、とりあえず汚いから鼻水は拭け」


 俺はそう言って大島にティッシュを渡した。

 大島はどうやら一人であの恋愛映画を見に来ていたようだ。

 しかし、以外だ。

 まさか大島がこの手の映画を見に来る趣味があったなんて。


「うっ……なんだ城崎も居たのか……」


「大島君も見に来てたんだね」


「ま、まぁな……良い映画だったな」


「お前泣きすぎだよ」


 大島はそう言いながら涙を拭き、俺と城崎に向かって尋ねる。

 

「兄貴たちはデートですか?」


「お前までそんな事を言うのかよ」


「いや、だって男女が一緒に映画って……」


「はぁ……やっぱ知り合いからもそう思われるわけね」


「え? 違うんですか? まぁ、兄貴には初白さんが居ますもんね」


「なんであいつの名前が出て来るんだよ」


「え? 違うんですか」


「一番ありえねぇ名前を出すな……それに初白を狙ってんのはお前だろ?」


「いやぁ……まぁ……そうだったんすけど……流石に諦めますよ」


「なんでだよ? 別に告って振られたわけじゃねぇのに」


「いや……だって……」


 そう言いながら大島は俺の顔を見てため息を吐く。

 こいつもこいつで大概失礼だな……。


「なんだよ」


「いや、いいっす。まだ兄貴は気がついていないみたいですし」


「はぁ?」


「じゃあ、俺はもう帰るんで、二人の邪魔するのもあれなのでこの辺で」


「お、おう……じゃぁな」


 そう言って大島は映画館を後にして行った。


「なんだったんだあいつ?」


「大島くん、意外とわかってるんですね」


「え? 何が?」


「な、何でもありません。それよりも折角ですし、ご飯も食べていきませんか?」


「あぁ、そうだね。丁度昼だし何か食べて帰ろうか」


「はい!」

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