第154話

「お前ら何をしてるんだ?」


「え? って島並さん!?」


「あ、先輩!」


 グッズ売り場にいたのは悟と悟るの彼女の篠崎香奈が居た。

 二人とも私服で手を繋いでいることから、恐らくデートであることがうかがえる。

 まぁ、こいつらは付き合ってるからありえない話ではないか。

 

「島並先輩なんか久しぶりですね!」


「あぁ、篠崎も元気そうだな」


「え? てか、先輩……まさかそっちの可愛い子って……」


 篠崎は城崎を見ながら俺に尋ねる。

 まぁ、二人きりで映画館に居るんだ、誤解を受けても仕方ないだろう。 


「あぁ、そういえば篠崎は見るの始めてか……この子は城崎瑠香、うちの道場の門下生だ」


「は、はじめまして」


「あぁ! あの道場で悟と一緒に稽古受けてるって言う? 話は聞いてるよぉ〜」


「え? そ、そうなの?」


「うん! すっごく強いんでしょ!?」


「い、いや、私なんか全然……」


 何やら女子二人が女子トークを始めてしまい、俺たち男子は蚊帳の外だ。


「しっかし島並さんもやりますね! まさか城崎とそんな関係だったなんて」


「アホ、んなわけねぇだろ。今日は城崎さんからチケットをもらって一緒に映画を見に来たんだ」


「そうなんですか? 俺はてっきりデートかと」


「残念ながら、お前と違って俺は一人なんでな」


「何を言うんですか! 兄貴なら彼女の一人や二人簡単に出来ます!」


「いや、別に複数欲しいわけじゃねぇよ」


 俺と悟がそんな話をしていると、篠崎が今度は俺に耳打ちをしてきた。


「先輩どういうことですか!」


「は? なんだよ急に」


「二人きりで映画ってどういうことですか!」


「え? いや、城崎さんがチケットくれてだな……」


 なんでこいつ怒ってるんだ?

 俺何か篠崎にしたか?


「そういうことじゃないんです! 蓮花というものがありながら、なんで他の女の子と映画デートしてるんですか!」


「は、はい?」


 言ってる意味がまるでわからない。

 なんでそこで初白が出てくるんだ?

 と言うか、なんで篠崎が怒るんだ?


「はぁ……まぁ、なかなか攻めに出られない蓮花も問題ですけど」


「いや、さっきからなんの話を……」


「別になんでもありません。ただ先輩って思った以上に鈍感なんだなぁーって思っただけです」


「はぁ?」


「悟、そろそろ行こう、入場始まってるわ」


「お、おう……じゃぁ島並さん俺はこれで」


「あぁ、じゃぁな」


 そう言って悟と篠崎は行ってしまった。

 一体なんだったんだ?

 篠崎は一体なんで怒ってたんだ?

 

「えっと……さっきのは悟君の彼女さんなんですよね? 話には聞いてましたけど、良い人ですね」


「まぁな……なんか怒ってたたけど」


「え? そうでしたか?」


 なんで俺だけに怒ってたんだ?

 マジで俺何かしたか?

 はぁ……マジで年下の女の子とか何考えてるかわからなくて怖い。


「それにしても意外ですね、カップルなのにあんな映画を見に行くなんて……」


「え? どんな映画を見に来てたんだ?」


「スプラッター映画です、確かR15だったような気がします」


「どっちの趣味かはわからんが、付き合わされる方は大変だな……」


 恐らく篠崎の趣味だろうな、悟がそういう映画好きって聞いたことないし、というかなんか嫌そうな顔して悟の奴入場して行ったからな……。


「彼女の趣味に付き合うってのも大変だな……」


 俺たちの映画もその後すぐに入場が開始され、俺と城崎さんは飲み物を買って上映されるスクリーンに向かった。

 やはり人気の映画だけあって朝一番の上映だというのに人の数が多い。

 しかもなんだかほとんどがカップルのようだった。

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