第151話

「あっ! 気をつけて帰るんだよ!!」


 俺がそう声を掛けると、城崎さんは立ち止まって俺に向かってお辞儀をし、そのまま家に帰って行った。

 あの子も偶に変なとこがあるからな……まぁ初白ほどでは無いけど……。


「映画か……久しぶりだな」


 俺は道場に戻りながらもらったチケットを見てそうつぶやく。

 最近は見たい映画はタブレットで見ているので、映画館で映画を見る機会はめっきり減ってしまった。

 なんだったら、恋愛映画を映画館で見るのは始めてかもしれない。


「なんで俺を誘ったんだ?」


 話題の映画なら、同じ学校の子でも誘ったら良いと思うのだが。

 なんで俺を誘ったのだろうか?

 ひょっとして、この前宿題を見て上げたお礼とかか?

 そんなの気にしなくても良いんだけどなぁ……。


「しかし、恋愛映画か……」


「よっ! 平斗!」


 俺がチケットを見て居ると、後ろから私服姿の竹内さんがやってきた。


「あ、竹内さん。どうかしたんですか?」


「いや、お前を後輩達の前でボコボコにしちまったからなぁ〜、飯でも奢ってやろうと思って」


「自覚あるならもう少し手加減してくださいよ、全く……」


「ん? お前何持ってるんだ?」


 竹内さんはそう言って、俺の持っていた映画のチケットを指差す。


「あぁ、さっき城崎さんからもらったんですよ。チケットが余ってるから一緒にって」


「え!? お前らって……いつの間にそんな関係になったの?」


「はい?」


 いつの間にそんな関係って……一体どんな関係を想像してるんだ?

 

「いや、これはただ遊びに誘われただけで……」


「いやいや、男女が一緒に映画なんてデート以外の何者でもないだろ!」


「デートって……ただ遊びに行くだけですよ」


 しかし、男女で一緒に遊びに行くことをデートと言うならデートかもしれないが、別に俺と城崎さんは付き合っているわけではないし、城崎さんもそんなつもりで渡したわけじゃ無いだろうし。


「え? お前、城崎ちゃんと付き合ってるわけじゃ……ないの?」


「どこからそんな話になったんですか? そんな訳無いでしょ」


「え? あぁ……あ! あぁ、わかった、理解した」


「さっきから一体何なんですか?」


 俺がそういうと竹内さんはなぜか優しい目をして俺の肩に手を置き、優しくこう言った。


「平斗、お前は少し女心を理解出来るようになれ」


「はい?」


 なんでいきなり女心の話になるのだろうか?


「なんでも良いですけど、飯奢ってくれるんですか?」


「え? あぁ、そうだそうだ! そう言う話だったな、良いぞ! バイト代も入ったし、奢ってやるから、さっさと着替えて来い!」


「マジですか、じゃぁ着替えてきます」


「おう!」


 こうして俺は竹内さんと食事に行くことになった。

 竹内さんとの食事は結構久しぶりだ。

 幼い頃から一緒だったと言うこともあり、良く二人で外食はするのだが、大抵は竹内さんが奢ってくれるので少し申し訳ない。


「なんかすいません、毎回」


「良いんだ良いんだ、気にするな! 俺はバイトもしてるし、大会で優勝して賞金もあるからなぁ〜」


 町中を歩きながら上機嫌でそんな話をする竹内さん。

 なんだか今日の竹内さんは機嫌が良いが、一体どうしたのだろうか?


「なんか竹内さん機嫌良いですね」


「ん? まぁそりゃあそうだろう、久しぶりに会った弟分が強くなってたんだ、嬉しくないわけねぇよ」


「それ、皮肉ですか? 俺なんてまだまだ竹内さんにも父さんにも……」


「安心しろ、道場でも言ったが、お前は確実に強くなってる。まぁそれ以上に俺や師範代が強すぎるんだがなぁ〜」


「あの試合の後で言われても自信持てないですよ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る