第150話
「いや、確かに竹内さんは凄かったですけど……兄貴も十分すごいですよ!」
「てか……島並さんも人間の動きをしてなかったと思うんですが……」
「やっぱり俺、兄貴みたいになりたいです!!」
「俺も! 島並さんのような強さがほしいです! 強敵にも臆せず挑めるあの強さが」
コイツらは……本当に馬鹿だな。
負けた奴みたいになりたいなんて、馬鹿としか言いようがない。
普通は竹内さんい憧れるはずなのに……。
「ふっ……お前ら俺は負けたんだぞ」
「いや、多分俺だったら竹内さんを前にして動けないっす……」
「正直俺もです……あの気迫が……」
まぁ、確かに竹内さんの気迫を感じると未熟なやつは動くことすら出来ないからな。
なんだかなぁ……少し失望されるかもなんて思ったけど、とんだ取り越し苦労だったみたいだな。
一番わからないのは、なんで俺がこんなに安心しているかだが。
✱
道場の男子更衣室、そこには竹内と平斗の父親が居た。
「どうだった慎太郎?」
「確実に強くなってますね、まぁまだまだですけど」
「手厳しいな」
「まぁ、ヤクザ者とやったって聞いてましたからね、成長はしていると思いましたが、俺の想像を遥かに超えていましたよ」
「そうか……親としてはきつく叱ったが、あの子は人として立派に成長している。だから、あぁして平斗を慕ってくる子が居るんだろうな」
「そういえば、あのお嬢様の件はどうなりました? まだ犯人が捕まって居ないと聞きましてけど?」
「あぁ、ボディーガードを増やして対応しているそうだ。もう俺たちが出る幕はないさ」
「……平斗を襲ったあのヤクザが持ってた薬については?」
「それが、出どころが途中でわからなくなってしまった」
「………何かきな臭いですね」
「あぁ、もしかしたら昔と同じ事が起こっているのかもしれない」
「………そんな事になったら、俺や平斗のような子がまた……」
「そのために警察も必死になって探している」
「でも、あいつらは警察で対応出来るようなやつじゃない!」
「慎太郎!」
言葉に熱が入る竹内に平斗の父親は声を上げる。
「落ち着くんだ、気持ちは分かるがまだそうだと決まったわけじゃない」
「……すいません」
「いや、良いんだ。熱が入る気持ちも分かる」
平斗の父親はそう言って竹内の肩を叩く。
「近々師範も帰って来る。何か情報を持って来るかもしれない」
「……はい」
✱
「兄貴! 今日もありがとうございました!!」
「明日もよろしくお願いします!」
「おう、気をつけて帰れよ」
「「はい!!」」
稽古が終わり、大島と悟の二人は家に帰って行った。
時刻は夜の19時。
会社帰りで今から道場に来る人も居るので、道場はまだ明るい。
「はぁーあ……さて俺も着替えるか」
俺はそんな一人言を呟きながら更衣室に向かおうとすると、私服に着替えた城崎さんが俺の元にやってきた。
「お疲れ様です島並さん」
「おう、お疲れ。城崎さんももう帰り?」
「はい! 実は明日は登校日なので、明日は道場に来れなくて……」
「あぁ、そうなんだ。わかったよ、気をつけて帰るんだよ」
「あ、はい……あ、あの……も、もう一個良いですか?」
「ん? どうかした?」
城崎さんはそう言うと、頬を赤く染めながら話始めた。
「じ、実はその……映画のチケットが二枚ありまして……よ、よかったら一緒に行きませんか?」
「え? 映画?」
そう行って城崎さんが出して来たのは、話題の恋愛映画のチケットだった。
「俺は別に良いけど……友達とかとじゃなくて良いの?」
「だ、大丈夫です! わ、私は島並さんとが!」
「え?」
「あ! な、ななな何でもありません! じゃ、じゃぁ今度の土曜日でお願いします! 詳しくはまたメッセージで!!」
そう行って城崎さんは行ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます