第145話
✱
まぁ、嫌われているのだろうなとは思っていたが、いざ本当に嫌いと言っている場面を目にすると少し傷つくものだな……。
前までは他のやつに噂のことで陰口を言われまくっていても、別に気になんてならなかったけど……なんでこいつにそう言われるのは、こんなに傷つくんだろう?
「ほぉ……そうか初白」
「せ、先輩……」
初白は俺の顔を見て青い顔をしていた。
たく……散々世話してやってきのに……まさか、そこまで嫌われてたなんてな……。
もしかして、俺が世話を焼くのも大きなお世話だったかもしれないな。
「まぁ、別に俺はお前に好かれたいと思ってないし、別にお前が陰で俺の事をなんと言っていても別に気になんかしねーよ」
「い、いや……あ、あのこれは……」
「気にするな、聞かなかったことにしてやるよ。それより城崎さん勉強見てあげるよ」
「え? あ、あの……はい」
別に腹は立たなかった。
不思議だ、あいつからからかわれるといつも腹が立つのに、なんで今回は腹が立たないのだろうか?
「す、すいません……私帰ります、勉強の邪魔しちゃいそうですし」
「そうか、気をつけてな」
そう言って初白は帰ってしまった。
まぁ、聞かれちまったし、気まずいだろうからな。
「じゃぁ、城崎さん勉強しようか」
「あ、あの……すいません」
「何が?」
「いえ……私が変な事を聞いてしまったから……私謝ってきます!」
「え? ちょっと! 城崎さん!?」
城崎さんはそう言って部屋を出て言った初白を追いかけて行った。
別に城崎さんは気にする必要なんてないんだが……ただあのアホが口走っただけだし……。
「嫌いか……」
好かれている自身はなかったけど、嫌われて無い自身ならあったんだけどな……。
まぁでも、俺のせいであいつは事件に巻き込まれたわけだし……嫌われても仕方ないか。
俺はその場に寝転び、そんな事を考えていた。
アイツと知り合ってもうすぐ二ヶ月、なんだかもっと長い時間一緒に居た感じがするな。
俺がそんな事を考えていると、誰かが二階に駆け上がってくる音が聞こえた。
そしてその足音は俺の部屋の前で止まり、勢いよくドアが開いた。
「な、な~んちゃって! 実はドッキリでしたぁ〜!!」
「………はぁ?」
俺はそう言う初白を見ながら間の抜けた声を出す。
「もう、先輩考えすぎですよぉ〜私は先輩の事嫌いではないですよぉ〜嫌いだったら遊びになんて来ないじゃないですかぁ〜」
「………お前もう帰れ」
「あ、いや先輩! なんでドアを閉めるんですか!?」
「お前が少し年上をからかいすぎだ! 反省しろ!!」
「だ、だからって追い返さないでくださいよ!! 私が居なくなって寂しかったくせに!!」
「寂しい訳あるかこのアホ! 良いからさっさと帰れ!」
「いーやーでーす! まだ漫画の続きを読み終わって無いんですから!」
「うるせぇ! このアホ!!」
「あ、またアホって言った!!」
俺は初白に言い返しながら、心のどこかで安心するのを感じた。
まったく、このアホは……。
「あ、あの……私も部屋に入れてもらえないのでしょうか?」
「いや、城崎さんは大丈夫だよ、さぁ入って」
「うわぁ……先輩が女子高生を自分の部屋に連れ込んでる〜香奈に言っちゃおう〜」
「その部屋のベッドでくつろいでたのはどこのどいつだ?」
まぁ、何にせよこいつはやっぱりムカつくな……でもまぁ……嫌いな訳じゃないことは確かだな。
俺はそんな事を考えながら、仕方なく初白を部屋の中に入れる。
あんまり騒いでいると、母さんにも迷惑だしな。
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