第144話


 私は夏休みに入り、先輩の家に来ていた。

 夏休みに入る前は先輩と学校で合っていたのだが、夏休みに入った今は私が会いにいかないと先輩とは会えない。

 だから私は夏休みにわざわざ先輩の家にやってきたのだ。

 夏は気になる相手との距離が急接近なんて雑誌に書いてあったのに……早くも邪魔者がやってきてしまった。


「あ、あの……」


「え? な、何?」


「お、お久しぶりです。三週間前くらいに前にファミレスで会いましたよね?」


「えっと……そ、そうよね、確かえっと……」


「城崎です、城崎瑠香」


「あ、そうそう、私は初白蓮華、よろしくね」


 確か先輩の家の道場の門下生って聞いていたけど、何よこの美少女!

 手足も細いし、ウエストも閉まってるし!

 顔なんて人形みたいじゃない!

 まさか道場にこんな可愛い子が通ってるなんて……しかもこの子も先輩狙ってるっぽいし……。

 ライバル強すぎじゃないのよ!


「あの……初白さんは先輩とはもう長い付き合いなんですか?」


「え? いや、えっと……まだ一ヶ月ちょっとの付き合いよ」


「そ、そうなんですか……よかった」


 良かったって何!?


 あっちも私の事をライバルとして意識してるって事!?

 

「そ、そっちはどうなの? 先輩とはその……長い付き合いなの?」


「いえ、私も同じくらいです、道場に入会したのがきっかけで仲良くさせて頂いてます」


 うわぁ……なんかめちゃくちゃ礼儀正しくいし、言葉遣いもちゃんとしてるんだけど……。

 てか、確かこの子ってあの有名な清浄女学院に通ってるらしいし、家もそれなりにお金持ちなのかしら?


「あ、あの…・・初白さんは今日はどうして先輩の家に?」


「え? いや……ただ暇だったから、遊びに来ただけで……」


「そうだったんですか………遊びには良く来るんですか?」


「い、いや……今日が始めてで……」


「そ、そうなんですか……」


 何!?

 そのほっとした表情!!

 私と先輩の仲がそこまで進展してなくて安心したってこと!?


「し、城崎さんは良く先輩の家には来るの?」


「えっと、稽古には来ますけど……部屋に入ったのはこれが始めてで……」


 よし!

 この子もそこまで先輩との仲は進展していないようね。

 でも、この子は道場に稽古に来てるから、先輩と毎日合ってるのよね……。

 はぁ……私も入会しようかな?


「あ、あの! 一つ聞いてもいいですか?」


「え? な、何かしら?」


「初白さんは島並さんの事をどう思っているんですか?」


「え!?」


 まさかのストレートな質問に私は凍りつく。

 ここで好きって答えたら、この後先輩の顔恥ずかしくて見れないかも……でもこの子にはなんか負けたくないし……。

 こ、こうなったら!


「そ、そういう城崎さんはどうなの? もしかして島並先輩の事………」


「はい、好きです」


 ま、まさかのどストレートに!!

 いくら本人が今ここに居ないからってまさかここまでストレートに言うなんて!!


「そ、そうなんだ……」


「はい、だからその……失礼な話なんですけど、先に部屋に初白さんが居たときは少しヤキモチを焼いてしまいました」


 しょ、正直に何でも言う子だな……。

 素直で可愛いなんて……勝てる気がしない。


「そ、そうなんだ……な、なんかごめんね」


「いえ、それで話を戻しますけど、初白さんは先輩の事をどう思っているんですか?」


「そ、それは……」


 いけない、このままじゃ私はこの子に惨敗だ。

 ここは一旦好きじゃなってことにしておいて、もっと準備を整えてから宣言しないと、私は負ける!!


「わ、私は違うわよ? 先輩なんて優しくないし、いっつも私の事をアホアホ言ってくるし! せ、先輩のことなんて全然好きじゃないわよ!」


 そう私が言った瞬間、部屋のドアが開き先輩が飲み物を持って戻ってきた。

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