第140話
俺はテーブルの上に持ってきた飲み物とお菓子を置き、初白の正面にテーブルをはさんで座った。
「お前良く俺の家が分かったな」
「真木先輩が教えてくれましたよ?」
「あいつか……勝手に人の個人情報を……」
「いやぁ~ビックリしましたよ、まさかこんな立派な家に住んでるなんて」
「まぁ、始めて来る奴は皆そう言うな」
「隣のあの建物が道場ですか?」
「あぁ、今は誰も居ないけどな」
初白は窓から見える道場を指さして俺にそう尋ねる。
本当に暇で来たみたいだな、まぁ飽きたらそのうち帰るだろう。
変に追い返す方が面倒くさくなりそうだ。
「いやぁ~一回来てみたかったんですよねぇ~先輩の部屋」
「なんでだよ?」
「何となくです!」
なんでそこでどや顔するんだこいつは……。
まぁ良いか、どうせ俺も暇だったし偶には相手をしてやるか。
「ん? あ、これ二年生の夏休みの課題ですか?」
「あぁ、解き終えてそこに置きっぱなしにしてた」
「え? もう終わったんですか?」
「学校に行かないとなると、やることが無くてな」
「えぇ……私なんてまだ一ページもやってないのに……」
「課題は計画的にやれよ、後で泣きを見るのはお前だぞ?」
「大丈夫です! 私一夜漬けは得意なんで!」
「なんで大変になる前提なんだよ」
初白と俺はそんな他愛もない話をしながら、お茶を飲んだりお菓子を食べていた。
そう言えば部屋に女子を入れるのはこいつが初めてかもしれないな。
まさか初めて部屋に居れる女子がこいつとは……。
「はぁ……」
「ん? どうしたんですか? 急にため息なんて吐いて」
「別に、初めて部屋に入れた女子がお前って事に少し絶望してただけ」
「え? そ、そうなんですか? てかなんで絶望するんですか!!」
「そりゃするだろ……もっとこう……彼女とかを最初に居れたかったよ」
「か、彼女ですか?」
「あぁ、そりゃそうだろ?」
俺がそう言うと初白は顔を真っ赤にして俯き始めた。
どうしたのだろうか?
もしかして少し熱かったか?
一応エアコンの設定温度を下げておくか……。
「あ、あの……やっぱり先輩も彼女とか欲しいと思うんですか?」
「まぁ……人並みには思うけど、今は道場の事があるからな……弟分みたいな奴らも居るし、今はいらねーな」
「そ、そうなんですか……い、いつになったら必要ですか!?」
「いや、そんなの俺も知らねーよ」
何を聞いてるんだこのアホは……。
というか、こいつそう言えば真木に振られたんだっけな。
もう完全に吹っ切れてるみたいだけど、少しくらいは引きづってんのかな?
「お前はどうなんだ? 新しく好きな奴とか出来たのか?」
「え? あぁ……いや……その……」
初白はそう言いながら、何やらモジモジし始める。
こいつ……まさかもう新しい好きな奴が?
最近の女子高生は切り替え早すぎないか?
「まぁ、頑張れよ。お前顔だけは平均よりも良いんだから自身持てよ」
「そ、それって! 私が可愛いってことですか!? そうですよね!」
「まぁ、世間一般から見たらそうなんじゃね? 可愛い部類だろう」
「か、可愛い……は、初めてですね……先輩が私にそんな事を言うの……」
「まぁそうだな、てかあった時からそれは思ってたぞ」
「そ、そうなんですか?」
俺がそう言うと初白は更に顔を赤くし始めた。
なんだか顔から湯気が出そうな雰囲気だな……。
「まぁ、その代わり頭は残念だったけど」
「なっ! それ、私がバカって意味ですか!?」
「バカって言うかアホ」
「もう!! アホアホ言わないでくださいよ! 本当にアホになったらどうするんですか!!」
「もうアホだから大丈夫だろ?」
「もう! 先輩こそそんな女の子の扱いじゃモテませんよ?」
「安心しろ、お前以外にはこんな舐めた扱いするわけねぇだろ?」
「それって私を舐めてるって事じゃないですか!!」
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