夏休み突入
第139話
*
夏休みに入った。
俺は学校に行くこともなく、夏休みを満喫していた。
最初の一週間こそ、茜さんや城崎さん、それに初白との約束で買い物に行ったが、それ以来俺は何処かに行くでもなく、道場の手伝いをしたりたまに高弥と遊んだりと落ち着いた夏休みを送っていた。
「うーん、今日は何をしよう……」
道場の手伝いはどうせ夕方からだ。
日中は何もすることが無いので、最近は夏休みの課題をやっていたがそれも終わってしまった。
暇だしタブレットで動画を見るか、それとも一人で映画にでも行くか……。
そんな事を俺が考えていると、下の階から母さんが俺を呼んだ。
「平斗ぉ! お客さんよぉ!」
「客?」
おかしいな、今日は高弥と約束なんてしていないはずだが?
俺はそんな事を考えながら、一階の玄関に降りていく。
「先輩! 遊びに行きませんか?」
「………」
そこに居たのは初白だった。
てか、なんで俺の家知ってんだよ。
「どうせ夏休みに遊ぶ相手も居なくて暇ですよね? 仕方ないので可愛い可愛い後輩の私が遊びにきて……」
俺は初白の話を最後まで聞かずにドアを閉め、玄関の扉に鍵を掛けた。
さて、タブレットで動画でも見よう。
「こらぁ! 先輩の人でなしぃ!! 普通後輩の女の子にこんな仕打ちします!?」
ドアをドンドン叩きながら、ドアの向こうで初白が文句を言う。
うるさい……そしてドアを叩くな。
俺は仕方なくドアを開け、初白を中に居れる。
「はぁ……何しに来たんだよ」
「いやぁ~先輩が暇してるかと思って」
暇はしてたが、お前には来てほしくなかったよ。
この暑さで熱中症にでもなられたら困るので、俺は初白を家の自分の部屋に上げた。
本当は絶対に部屋に居れたくない人物だったのだが、あの事件以来、俺はどうもあいつに自然と気を使っているようだ。
「へぇ~ここが先輩の部屋ですか……なんか普通ですね」
「別に良いだろ、面白い部屋なんて早々無いだろ、適当にそこのクッションでもケツに敷いて待ってろお茶持ってきてやる」
「うわーい! なんか先輩最近優しいですね、気持ち悪いですよ」
「今すぐ追い出してもいいんだぞ?」
「あぁ! すいませんすいません! 謝りますから!!」
「たく……」
俺はそう言いながら、一階の冷蔵庫に飲み物を取りに向かった。
「あら平斗どうしたの?」
「あぁ、お客さんが来たからお茶をね」
「うふふ、あの可愛らしい女の子は誰? お母さん気になるわぁ~」
「母さんが思ってるような関係じゃないよ。何かお菓子もあったら持ってても良いかな?」
「えぇ良いわよ、うふふ変なことはしちゃダメよ?」
「からかわないでくれよ母さん、じゃあ俺は上に居るから何かあったら呼んで」
「わかったわ」
台所で料理をする母さんとそんな話をした後、俺はお茶とお菓子を持って部屋に戻った。
しかし、俺は部屋を開けた瞬間、思いがけない光景を目にしてしまった。
なぜか初白が俺のベッドにうつ伏せで寝ているのだ。
「おい」
「うわぁっ! って! せ、先輩!? か、帰ってくるの早かったですねぇ……あはは……」
俺が声を掛けると初白は直ぐにベッドから飛び起き、元の場所に座った。
こいつなんで俺のベッドに……もしかして夏休みで昼夜逆転してて眠かったのか?
「はぁ……お前さぁ、夏休みだからってあんまり夜遅くまで起きてるなよ?」
「へ? ………あ、あぁ!! そ、そうなんですよ! 夜中まで友達と電話とかしてて!! 少し寝不足で! さっきのはそれで少しベッドをお借りしたと言いますか!!」
なんでそんな大声で言うんだ?
しかもなんか少し必死だし。
やっぱりこいつの考えてることはよく分からねぇな。
「まぁなんでも良いけどよ、変に部屋の物を物色とかしてないだろうな?」
「大丈夫ですよ! 先輩のエロ本なんて探しませんから~」
「なんで持ってる前提で話をしてるんだ?」
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