第138話
*
「さぁ! 買い物に行きますよ!!」
「はいはい」
「なんですか? 可愛い女の子と一緒にお買い物なのに何か不満なんですか?」
「いや、別に……」
可愛い子ってどこに居るの?
なんて聞いたら多分こいつまたうるせぇからな……。
今日は初白との買い物の日だ。
初白とはショッピングモールに来たのだが、こいつは朝からうるさい。
なんで朝っぱらからこんな元気なんだか……まぁでもこいつはその方がいつも通りで安心するか……。
「さて、どこに行くんだ? 服でも買うか? それとも水着でも買うか?」
「いえ、そういうところじゃなくて……」
「ん?」
そう言う初白と一緒に来たのは、調理器具が並ぶ売り場だった。
「意外だな、お前がこんなところに来たがるなんて……」
「最近料理をするようになりまして」
「へぇ……全く料理が出来なかったお前がねぇ……」
「別に良いじゃないですか!! 最近は成長したんです!」
「へぇ~まぁ良いことだな、料理が出来る女子じゃモテるぞ」
「先輩は好きですか? 料理の出来る女子」
「え? あぁ……まぁ出来ないよりは出来た方が良いな」
「………ちなみに何が好きなんですか?」
「母さんの作ったカレー」
「カレーなんですか?」
「悪いかよ、子供の頃から好きなんだよ、母さんの作ってくれるカレー」
「思い出でもあるんですか?」
「まぁ……な」
このことをこいつに話すとなると少し長くなるからやめておこう。
「そうですか……じゃあ、今度一緒に作りましょうよ」
「いやなんでそうなる?」
「私、カレーの作り方分からないので」
「そんな理由かよ、中学とか小学校の調理実習で作っただろ?」
「もう忘れました!」
どや顔でそう言う初白。
こいつは本当にアホだな……。
「はぁ……まぁいつかな」
「なんでため息吐くんですか!」
「別になんでも……」
まぁ、こいつがアホじゃなかったら、こいつらしくないか。
「今私の事馬鹿にしませんでした?」
「してないしてない」
なんで分かったんだこいつ?
アホのくせに勘は良いんだな。
「また馬鹿にしましたね」
だからなんでわかるんだよ!!
エスパーかこいつは!!
「そ、そんなわけねぇだろ……」
「そう言う事は私の目を見て言ってもらえません?」
ジト目で俺を見てくる初白を誤魔化しながら、俺達は店の中を物色する。
「そう言えば何を買うつもりで来たんだ?」
「エプロンです、私用のエプロンが欲しくて」
「二人で特訓した時のあのエプロンは?」
「あれはお母さんのですよ」
「あぁ、そう言うことな」
売り場に来るとエプロンだけでもそうとな種類のエプロンがあった。
「へぇ……以外に結構あるんだな」
「オシャレなのもありますね~どれが良いかなぁ?」
「お前にはそうだな……この緑色のエプロンなんてどうだ?」
「む……先輩にしてはセンスの良い物を……」
「俺にしてはってどういう意味だよ!!」
「でも、確かにこれは可愛いですね」
そう言いながら初白は緑色のエプロンを持って腰に当て始める。
「どうですか? 似合います?」
「あぁ良いんじゃないか」
「そうですか? えへへ~じゃあこれにしよう~」
「待て待て、他にも色々あるんだからもっと見てから決めたらどうだ?」
「いや、これ可愛いですし……それに先輩が折角選んでくれましたからね。これにしようと思います」
「そ、そうか?」
まさかこんな早く決まるなんて。
そんなに気に入ったのかこいつ?
「もう目的達成しちまったな」
「何言ってるんですか?」
「え?」
「今から服を買って、水着も買いに行くんですよ! これは前座です!」
「本命はやっぱりそっちかよ……」
「さぁ! 荷物持ち先輩よろしくお願いします!」
「おい誰だそれは! 変な名前をつける!」
俺は初白に連れられ、夕方まで買い物に付き合わされた。
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