第137話
✱
「す、すいませんお待たせしました!」
「あぁ、良いよ全然待ってないし」
今日は城崎さんとの買い物の日だ。
昨日の茜さんとの買い物とは違って、今日は穏やかだ。
駅前に朝九時半に集合し、俺たちは駅前の店を周り始めた。
城崎さんの私服は昨日の茜さんと違って落ち着いている感じがした。
ワンピースの上にカーディガンを羽織っており、いつもよりもなんだか清楚な感じがする。
「それで今日は何を買うの?」
「えっと……夏服とか色々買おうかと……すいませんお休みの日に」
「いや、全然良いよ。それに偶には城崎さんと出かけたいし」
茜さんみたいな強引な買い物よりも城崎さんとの落ち着いた買い物の方が疲れないしな。
「そ、そう言ってもらえると……嬉しいです」
そう言いながら城崎さんは少し照れていた。
城崎さんとまず入ったのは女性向けのアパレルショップだった。
男の俺としては入りづらかったが、城崎さんが入りたいというのだから仕方がない。
「どれが似合いますか?」
「そうだな……」
城崎さんはそう言いながら、何着か服を選んで俺に見せて来る。
勝手な俺のイメージだが、城崎さんには青系の色が似合うきがした。
「この青のTシャツなんて城崎さんに似合うと思うけど?」
「そ、そうですか?」
「あぁ、来てみたらどう?」
「じゃ、じゃぁ試着してきます!」
「あぁ、俺はここで待ってるよ」
そう言って試着室に入っていく城崎さん、周りは女性だらけで居心地は悪かったが、城崎さんとの買い物はなんだか新鮮で楽しかった。
「ど、どうですかね」
「あぁ、やっぱり似合うね、可愛いよ」
「へぇ!? そ、そうですか!」
俺がそう言うと彼女は顔を真っ赤にしてそう言う。
お世辞を言ったつもりはない、元が良いから何を着てもそれなりに似合うが、やっぱり青が似合ってよりおしゃれに見えた。
「じゃ、じゃぁこれ買います……」
そう言いながら、城崎さんは顔を赤くしてレジに向かった。
なんだか道場で見る城崎さんとは違って、今の城崎さんは可愛らしく見えた。
「あのアホもこのくらい素直だと良いんだが……」
それにしても急に買い物に誘ってくるなんて、しかも服を選ぶなら俺よりも茜さんや真奈美さんの方が適任だと思うんだけどな。
俺はレジから戻ってくる城崎さんを見ながらそんな事を思う。
「買ってきました」
「じゃぁ、次行こうか」
「はい!」
とは言っても、特別何かを買いに来た訳でもないので、俺たちは適当に駅前の店をぶらぶらしていた。
「何か他に買いたい物とかないの?」
「そうですね……そういえば新しいシャーペンが欲しいです、この前使っていたら壊してしまったので……」
「そっか、じゃあ文房具屋に行こうか」
「あ、あの……」
「ん? どうした?」
俺がそう言って、文房具屋に向かおうとしていると城崎さんが立ち止まった。
「あ、あの……私の買い物ばっかりですけど……島並さんは私と一緒で楽しいですか?」
なんだ、そんな事を気にしてたのか……。
「俺は基本誰かと出かけた時はいつもこんな感じだよ、なんていうか自分の行きたいところに行くより、一緒に来た奴の行きたいところに一緒に行くほうが好きなんだよ。だからそんな心配しなくても俺は城崎さんと一緒で楽しいよ」
俺がそう言うと城崎さんはまた顔を赤くして照れてしまった。
てか、どこに照れる要素があったのだろうか?
「そ、それなら良かったです」
「それに道場以外での城崎さんとは勉強会の時しか会ってないから、こういう風に一緒に買い物に行くのは新鮮で楽しいよ」
「じゃ、じゃぁ……こ、これからも誘ったら一緒に出かけてくれますか?」
「あぁ、もちろん。そういえば茜さんも海に行きたいって言ってたし、今度みんなで海にでも行くか?」
「あ……えっと……はい……………二人っきりじゃないんだ……」
「ん? 何か言った?」
「な、なんでもないです!!」
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