それぞれとのデート
第136話
*
はぁ……なんで俺がこんな事をしなくちゃいけないんだ。
「よし! それじゃあ行くぞ!」
「はいはい」
「どうした平斗? なんかテンション低くないか?」
「まぁ、休日に買い物に付き合えと無理矢理言われればこんなテンションにもなりますよ」
「あぁ? お前なんか言ったか?」
「いてて!! 言ってません!!」
今日は茜さんとの買い物の日だ。
茜さんは朝から俺の家に迎えにきて張り切っていた。
「それで水着を買うって言ってましたけど、水着なんて着る機会あるんですか?」
「あるわよ! 今年が高校生活最後の夏なんだから!」
「はぁ……って言っても去年海なんか行きました?」
「去年は色々あったのよ! 良いから行くわよ!」
「あ! 引っ張らないでくださいよ!」
茜さんは俺の手を引っ張ってどんどん先に進んでいく。
なんだか茜さんと一緒に出掛けるのも久しぶりだ。
「そう言えばなんか久しぶりに茜さんの私服見ましたよ」
「そうか?」
「はい、道場に来るときは制服ですし」
「あぁ、まぁそうだよな……それで……どうなんだよ?」
「何がですか?」
「わ、私の私服はその……変じゃないのかよ……」
「え?」
茜さんにしては随分女性らしい恰好だと思ったけど、正直似合っている。
ショートパンツだからかいつもより足が細くて長く見えるし、肩だしのTシャツも似合っている。
まぁ強いて言うなら、少し露出が多い気もするけど。
「良いんじゃんないですか? 似合ってると思いますよ」
「ほ、本当か?」
「はい、茜さんってセンス無いかと思ったら、意外にセンス良いんですね」
「意外とはなんだ?」
「いててて!! ほ、褒めたのに!!」
なんで褒めたのに怒られるんだ?
なんていうか、この人もたまに変なところで怒るよなぁ……。
店に到着し、茜さんは水着を見始めた。
男性用と女性用が分けられており、平日とあってお客さんの数も少ない。
夏休みの良いところは、こういう平日にゆっくり買い物が出来るところだよなぁ。
「どうだ? 平斗!」
「え? あぁ……良いんじゃないですか?」
「お前適当かよ……」
「いや、そういわれても正直水着の良しあしなんてわかりませんよ」
今茜さんが来ているのは、普通のビキニだった。
胸もそれなりに大きい茜さんはビキニを着ていても違和感はなかった。
「じゃぁどんな色が似合うかとか教えろよ」
「え? 茜さんに似合う色ですか? うーん……やっぱり赤ですかね」
「赤?」
「はい、出来るだけ明るい感じの」
「私って赤似合うのか?」
「まぁ、俺はそう思いますね」
昔見た私服で茜さんが赤色の服を着ていて、それがなんでか印象に残ってるんだよな。
「ふーん……じゃぁこの赤のビキニ来てみるか」
「多分、今着てる奴よりは似合うと思いますよ」
そして数分後、茜さんは青のビキニから赤のビキニに着替えて試着室から出てきた。
「ど、どうだ?」
「あぁ、やっぱり似合いますね」
「そ、そうか?」
やっぱり茜さんには赤色が似合うな、なんかしっくりくるって言うか、安心感があるって言うか。
しかし、顔まで赤くする必要はないと思うんだがどうしたのだろうか?
「茜さん? なんか顔赤くありません?」
「な、なんで無いわよ!! あんまこっち見んな! スケベ!!」
「あんた俺になんて言って買い物に付き合えって言いました?」
ほんとにこの人の怒るポイントが分からない。
結局茜さんは赤のビキニを購入した。
「良かったですね、良いのが見つかって」
「あ、あぁ……あのさ、平斗」
「なんですか?」
「8月になったら……その……海行かないか?」
「え?」
「いや、その! なんだ! 忙しいんだったら無理にとは言わないけど! ほら真奈美と二人って言うのも寂しいし!」
「別に良いですよ、どうせ暇だし、どうせならみんな誘っていきますか」
「あ、あぁ……そ、そうだな…………馬鹿」
「え? なんか言いました?」
「なんでもねぇよ!」
「いって! 何するんですか!」
茜さんは言いながら俺の背中に持っていた自分のバックを叩きつけてくる。
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