第133話

「あの……」


「はい? なんでしょうか?」


「いえ……なんでも……」


 なんだろうかこの違和感は……。

 誰かに似ているようなこの感覚……。

 俺は使用人の背中を見ながら考える、そして気が付く。

 この感覚が危険な相手と出会った時のそれと同じだということを……。

 まさか……この屋敷内の使用人の中にストーカーが居るのか?

 だとすると、あの人が?

 しかし、複数居る可能性も……。

 けど、迂闊に手を出すのはまずいな……この前の二の舞になったら元も子もない。

 

「ん……この前の二の前? まさか!!」


 俺はその瞬間あのメイドの存在を思い出した。

 俺の背後を取ったあのメイド……まさかと思うがあのメイドが敵か?

 確かに俺はまだ未熟だ、しかし一般人から背後を取られるほど俺は未熟では無いと思っている。

 まさかと思う、俺は急いでお嬢様の部屋に戻った。

 ドアを開け、俺はメイドの姿を確認する。


「う~ん……お嬢様ぁ~ろうそくはだめぇ~」


 あ……大丈夫だ、絶対にこのメイドは無害だ。

 てかいつまで寝てんだこんな時に!

 

「山之内さん! いい加減起きて下さい! 聞きたいことがあります!」


「うーん……なんれすか? 夜這いですか?」


「バカな事を言ってないで起きて下さいよ、少し聞きたいことがあるんです!」


「えぇ? 私のスリーサイズとかですか?」


「そんな情報はいりません!」


「もう、なんですか……」


「おそらく今から来る使用人の男性について聞きたいんです」


「へ?」


 俺がそんな事をメイドさんに聞いて居ると、部屋のドアが二回ノックされた。

 

「失礼します、お飲み物をお持ちしました」


「………そこ置いて」


「かしこまりました」


 あの男だ。

 愛想の良い笑みを浮かべてはいるが、この男には何かある。

 もし、この男が最近雇われた使用人であるとするのであれば、更にこの男は怪しい……。

 男は飲み物を置くとそのまま部屋を出て行った。


「山之内さん……あの人は一体?」


「え? あぁ……まって? あんな使用人居たっけ?」


「え!?」


 という事は、あの人が持ってきた飲み物も!!


「おい、お嬢様!!」


 俺がそう言った瞬間、お嬢様はコップを持つのをやめ俺の方を見た。

 

「その飲み物手を付けるなよ!」


「え? 急にどこにいくんですか?」


「あの使用人を追う!!」


 俺はすぐさま部屋のドアを開け、先ほどの使用人を探す。


「おい!!」


「………何か?」


 使用人の男は廊下を曲がってすぐの所に居た。

 先ほどの笑顔ではない、何かを警戒するような顔……間違いない、こいつだ。


「あんた……本当にここの使用人か?」


「………お前こそ誰だい? 調べた使用人のリストにお前を見たことは無かったけど……」


「あぁ、俺は臨時で雇われたボディーガードだからな。アンタが知らないのも無理はないだろ」


「………まぁ、俺に気が付いたのは誉めてやるよ……でも深入りしすぎるのも困り者だなガキィ!!」


「うっ!!」


 男はいきなり蹴りを入れてきた。

 まさかいきなり攻撃してくるなんて……。

 なんなんだこいつ……ただのストーカーじゃないぞ!


「ガキィ……少し寝ててくれよ……俺の仕事が終わるまでなぁ!!」


「くっ! お前! なんなんだ! ただのストーカーじゃねぇな!!」


「ストーカー? あぁ、そう呼ばれてたのか! 悪いな! 俺も金で雇われてるんだよ! ここのお嬢様を誘拐して来いってな!!」


「そういう目的か!!」


 一撃一撃が重たいが、パワーだけだ。

 戦い方も何もかもが素人に毛が生えたレベルだ。

 大丈夫だ、この程度の相手ならなんとかなる。


「ふん!!」


「なっ……なんだお前……」


「生憎、一応ボディーガードとして雇われてんでな!!」


「ぐはっ! こ、このガキ!!」


 よし、あとはこのまま気絶させれば……。

 そう思った瞬間、おそらく様子がおかしいのに気が付いたのだろう、お嬢様が俺とストーカーのところに来てしまった。

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