第132話

「お嬢様はうるさいから静かにしろと申されて下ります」


「いや、主にうるさいのはあんただよ」


「まぁ、細かいところは目を瞑りましょう」


「アンタが言うなよ……」


「まぁ、良いです。付いて来て下さい」


「なんなんだまったく……」


 こうして俺の光音お嬢様のボディーガードのアルバイトが始まった。

 まぁ、そうは言っても光音お嬢様は基本的に家から出ず、部屋の中で何かをしている様子だった。

 タブレットやパソコンで何かをしているようだが、何をしているのだろうか?

 まぁ、正直俺にしたら楽なバイトだ、お嬢様に何かあるまで基本やることは無いので暇な位だ。


「はぁ~暇ですねぇ」


「いや、アンタは仕事しろよ」


 山之内さんはそう言いながら、お嬢様の部屋でお菓子を食べ、ファッション雑誌を読んでいる。

 てか、本当にこの人専属メイドか?

 自由すぎない?

 てか、お嬢様も少しは怒れよ!


「そこのボディーガード、何か面白い事でもしてください」


「なんだその無茶ぶり! やるわけないだろ!」


「年上の命令は聞きなさい! まったく、これだから最近の若い子は……」


「そう言えば山之内さんって社会人なんですか?」


「私は大学生ですよ、どうですか? 年上のお姉さんメイド、萌えません?」


「いや、別に」


「え!? 貴方本当に男の子!? もしかしてそっちの趣味が!!」


「なんでそうなるんだよ!」


「だってメイドさんに欲情しない男子なんて居ないでしょ!」


「普通に居るわ!」


 俺と山之内さんが言い争いをすると、お嬢様はまたしてもこちらを見て一言。


「………うるさい」


「申し訳ございませんお嬢様、この者に言い聞かせておきます」


「なんでだよ……」


 そうこうしているうちの半日が過ぎてしまった。

 本当にボディーガードなんて雇う必要あったのだろうか?

 お嬢様はずっと部屋に居るし、俺はそのお嬢様を見守っているだけ、メイドの山之内さんはメイドの仕事をせずにお菓子を食ってるし。


「はぁ……こんなので本当に良いのか?」


 思わずそんな言葉を口に出してしまった。

 しかし、お嬢様は俺の言葉に何も反応を示さない。

 メイドは昼寝を始めたし……。

 というか、あのお嬢様さっきから何をしてるんだ?

 パソコンもなんかモニター六個も有るし……。

 写ってるのはグラフか?

 まぁ、何をやっているかなんてどうでも良いか、あのお嬢様の勝手だし。


「………ねぇ」


「……え? あ、はい!」


「………飲み物……持ってきて」


「え? 俺? あ……わ、分かりました。何が良いですか?」


「お茶………それと話し方……気持ち悪いからいつも通りで良い」


「きもっ!? わ、わかったよ」


 初対面に近い相手に気持ち悪いなんていうか?

 てか、本来この仕事をするはずのメイドがなんで寝てんだよ!

 なんで俺がメイドの代わりにこんな雑用みたいな事をしなくちゃ行けないんだ!


「おい、アンタ起きろよ」


「う~ん……お嬢様ぁ~縛るのはいけません……」


「どんな夢を見てんだよ……」


 俺は起きそうに無いメイドを放って、部屋の外に出て他のメイドさんや使用人を探し始めた。

 誰かにいえば飲み物を部屋まで持ってきてくれるだろう。

 そんな事を考えていると、目の前から歩いてくる使用人の男の人を発見した。


「あ、すいません」


「はい? どうかなさいましたか?」


「えっと、お嬢様がお茶が欲しいそうで……」


「あぁ、そうでしたか。かしこまりました、今お持ちしますとお伝え下さい」


「ありがとうございます」


 そう言って使用人の男の人は笑顔で元来た道を引き返して行った。

 しかし、なぜだろうか?

 俺はその使用人に何か違和感を感じた。

 なんだろう……何か他の使用人とは違う何かを感じる。

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