第131話
なんというか、大人しそうで綺麗な人だった。
茜さんとは正反対な対応だな。
まぁ、こんな事を言ったら茜さんにボコボコにされそうだけど。
「でも、ボディーガードなんていくらでも雇えそうな気がしますが……」
「実は訳あって娘と同い年くらいで腕の立つ人物が良くてな、それで竹内君に相談しらところだったんだよ」
「はぁ……あと竹内さんからは付き人のような感じだと聞いていますが」
「あぁ、ボディーガードとして雇うと色々面倒なことがあるのでな、君は娘の付き人として雇わせてもらうが、基本は娘を守るボディーガードをしてほしいのだよ」
「それならまぁ良いですけど……」
金持ちの娘を狙ったストーカーか……一体どんな奴か見てはみたいが。
そう言うのは警察の仕事だな。
「内容は分かりました、あとは私は具体的に何をすれば?」
「とりあえず、娘と行動を共にしてくれるかね?」
「わかりました」
「では、私はこれから仕事があるので失礼させてもらうよ」
「はい」
そう言って旦那さんは出て行った。
残った奥さんも何やら用事があるらしく、俺に一言よろしくお願いしますと言った後に部屋を出て行ってしまった。
部屋に残ったのは俺と娘さんのみ。
なんというか気まずい……。
「あ、えっと……よろしくお願いします」
「………よろしく」
「えっと………とりあえず一緒に居ればいいかな?」
「………適当にそうして」
なんだこの子、大人しそうだとは思ったけど、口数もかなり少ないぞ。
しかも会話をする気が全くない。
さっきからスマートフォンを弄っているだけだ。
「と、とりあえず自己紹介しておくよ、俺は島並平斗。よろしく」
「………高柳光音(たきやなぎ みつね)」
「そ、そっかよろしく……」
「………」
なんだこの子!
俺が今までに出会ったどの女の子ともタイプが違う!
今までの子はそれなりに初対面でも会話のキャッチボールが出来た。
しかし、この子は俺と会話のキャッチボールをする気が無い!!
どうしよう……まさかこの子と今日一日ずっと一緒なのか?
「戸惑っていらっしゃいますね」
「うぉっ! ビックリした!!」
俺が悩んでいると、背後から急にメイド服姿の女性が声を掛けてきた。
「あ、貴方は?」
「お嬢様の専属メイドを務めています、山之内(やまのうち)と申します」
「は、はぁ……」
専属メイドまで居るのかよ……。
てか、声を掛けられるまでこの人の気配をまるで感じなかった……まさか俺が後ろを取られるなんて……あ、でもこの前もあのヤクザに背後を取られて刺されたっけ?
やっぱり俺はまだまだだな。
「基本的にお嬢様の傍には私もおりますので、何か困ったら私に言ってください」
「は、はぁ……わかりました」
「可愛いお嬢様と二人っきりでなくて残念でしたね」
「は?」
「どうせ、金持ちのお嬢様のボディーガードと聞いてウキウキしてきたのでしょ? もしかしたら逆玉とかあり得る? なんてアホ丸出しの幻想を抱いて」
「いや、俺はただバイトに……」
「無理もありませんね、高柳家は日本有数の名家、期待する気持ちもわかりますが、お嬢様に手なんか出したら………あの旦那様が許しませんよ?」
「いや、だから俺は別にそんなの……」
「ですが! 個人的には身分差の恋とかそう言うの大好物なので! どうぞ、お嬢様に手を出して下さい!」
「いやだから人の話を聞け!! なんなんだアンタ!!」
ヤバイ、このメイドさん……絶対に変な人だ。
てか、俺達がそんな話をしていてもあのお嬢様はスマホしか見てないし!
少しは興味を持てよ!!
そんな事を俺が思っていると、お嬢様はスッと立ち上がり部屋の扉に手を掛ける。
「山之内さん」
「はい、お嬢様かしこまりました」
え?
何? 今ので一体何をかしこまったの?
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