第130話



 竹内さんに紹介された仕事はボディーガードの仕事だった。 

 日給は1万5千円と高校生のお給料にしては高めだ。

 なんでも、条件に合う人間が見つからず困っていたらしい。

 俺は土曜日、そのバイトをするためにとある豪邸に来ていた。


「広いな……」


 ボディーガードを雇うくらいだから結構な金持ちを予想していたが、実際に来た家は俺の想像を遥かに上回っていた。

 広い庭に噴水、家も大きくうちの道場が六個くらい入ってしまいそうな大きさだった。

 俺はインターホンを鳴らし、家主に要件を伝える。


「すいません、竹内さんから言われてボディーガードのアルバイトに来ました」


『あぁ、直ぐに開けます』


 インターフォン越しにそう答えたのは優し気な女性の声だった。

 そう言われて俺が門が開くのを待っていると、自動で門が開いた。

 俺は思わず驚いてしまった。

 金持ちの家というのはすごいな……。

 中に入って出迎えてくれたのはいかにもマダムと言った感じの女性だった。

 優しい笑みを浮かべ、ニコニコ笑いながら俺を出迎えてくれた。


「話は聞いて居ます、島波道場の息子さんだそうで」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「詳しい話は中でしますので、どうぞこちらへ」


「はい」


 そう言われ、俺は中の大きな部屋に案内された。

 そこには旦那さんと思しき男性と俺とそんなに年齢の変わらなそうな女の子がソファーに座っていた。


「いやぁ、よく来てくれたね。君の話は竹内君から聞いて居るよ」


「あ、そうなんですか?」


 竹内さん一体この人とどんな関係なんだ?

 いかにも社長のような感じの旦那さんは、俺を笑顔で出迎えてくれた。

 

「早速で悪いんだけど、簡単なテストをさせてもらっても良いかな?」


「え? あ、あぁまぁ良いですけど……」


 テスト?

 テストとは一体なんだろうか?

 俺は竹内さんから何も聞いて居ないのだが……。


「テストは簡単なものだよ、おーい! 誰か来てくれないか!」


 旦那さんがそう言うと、部屋の奥の方からスーツ姿の男性が三人現れた。

 年齢は三十代くらいであろうか?

 どうやらこの家の使用人らしい。


「竹内君の紹介だし信用はしているんだけどね、一応念の為君の力がどれほどなのか見せてもらいたくてね。今からこの三人が君に襲い掛かってくる。君はこの三人を倒してくれないか?」


「はぁ……それは全然良いですけど」


 まぁ、ボディーガードのバイトだし、多少は強くないと務まらないという事だろう。

 安全を考慮して、最低限の強さを持っている人を雇いたいという訳か……。

 俺は更に部屋の奥へ移動させられ、三人の使用人と対峙する。

 ルールは簡単で俺が三人を倒すか、三人が俺を倒した時点で勝敗が決定する。


「では始め!!」


 旦那さんの声で俺は直ぐに反応し、構えを取る。

 襲ってきたのは三人、動きを見る限り全員素人の様子だった。

 このくらいなら本気を出さなくてもいけると考えた俺は、直ぐに反応し使用人三人を地面に寝かせる。


「ぐはっ!」


「いでででで!!」


「う、うぅ……」


 正直、本当に素人だった。

 動きもなんだかたどたどしく、なんだか手ごたえが無さ過ぎて拍子抜けしてしまった。


「ご苦労様、いやぁー! 流石は竹内君が見込んだだけのことはあるよ! 合格だよ! 詳しい話をするから来てくれるかい?」


「あ、はい」


 俺はテストが終わった後、再び最初の部屋に戻され話を聞くことになった。


「実は私の娘には現在、酷いストーカーが居るんだ」


「ストーカーですか?」


「あぁ、外出した娘の後をつけてきたり、手紙がポストに何通も入っているんだ」


「なるほど……警察には?」


「もちろん言った、しかし警察も四六時中警備をしてくれるわけじゃない。だから君を頼んだんだ」


「なるほほど」


 俺はそう答えながら横目で娘さんの方を見る。

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