第129話
*
さて、どうしたものだろうか……。
七月の中旬、俺は道場で一人考え事をしていた。
「まさか……3日連続で予定が入るとは……」
夏休みが目前に迫った俺は、夏休みの最初の週の予定を見て頭を悩ませていた。
まさか、三人から買い物に誘われるとは思っても見なかった。
正直3日連続で遊びに行くほどの小遣いを俺は持ってなどいない。
事の始まりは茜さんから買い物に付き合えと言われたことだった。
なんでも高校生最後の夏休みを有意義に過ごすために水着を買いに行くらしいのだが、男の意見が欲しいそうで、俺は無理やり一緒に買い物に行くことになってしまった。
「茜さん無理やりなんだもんなぁ……」
その後、道場から帰る城崎さんから普通に買い物に誘われてしまった。
まぁ可愛い後輩の頼みなので別に良いかと思い、引き受けたのだが……まさか茜さんとの日程の翌日とは思わなかった。
「城崎さんはまぁ良いけど……問題はあのアホだな」
最後に俺を買い物に誘って……というか無理やり連れて行こうとしているのは初白だ。
あのアホ、「先輩夏休みどうせ暇ですよね?」なんて言って、無理やり約束させやがって……。
「はぁ……とりあえず先立つ物が必要だな、バイトするか……」
なんにせよ、約束は約束だ。
小遣いもあまり無いし、約束の前に金を稼がないとな。
「ここは竹内さんに頼んで見るか……」
竹内さんは色々なところに顔が効く。
だから普通に募集していないようなアルバイトを偶に紹介してくれたりする。
大変だけど結構高額なアルバイトも多く、たまに俺はアルバイトを紹介してもらっている。
稽古終了後、俺は竹内さんに事情を話し、何か良いアルバイトはないかを聞いた。
「なるほどな! よし俺に任せておけ!」
「すいません、いつもありがとうございます」
「兄貴! お疲れ様です! 飲み物を持ってきました!」
「どうしたんですか? 島並さんも竹内さんも何を話ていたんですか?」
俺と竹内さんが話をしていると、悟と大島が飲み物とタオルを持ってやってきた。
「あぁ、ちょっと竹内さんにバイトを紹介してもらおうと思ってな」
「バイトですか? 兄貴金に困ってるんですか?」
「まぁな、色々金が入用でな」
「お前らもバイト紹介してほしかったらいつでも言えよ、単発のバイトならいつでも紹介してやるぞ」
「本当ですか! 実は俺、香奈とのデート資金が欲しくて……」
「俺も遊びに行く金が欲しいんですよ、竹内さんお願いします!」
「おう、任せろ!」
この二人が道場に通い初めてもう一週間、既に道場の連中とも打ち解けており、竹内さんとも仲良くなっていた。
まぁ、入って初日に力の差を見せつけられて、この人には逆らわない方が良いと思ったのかもしれないが。
「しっかし、平斗にも弟分が出来るとはなぁ〜俺は嬉しいぞ!」
「からかわないでくださいよ」
ニヤニヤしながらそういう竹内さん。
全く何が嬉しいんだか……。
あの事件の傷はすっかり良くなり、俺は城崎さんの指導に戻り、悟と大島の二人は基礎練習を始めていた。
悟と大島を見てくれているのは、現在は父さんだ。
基礎的な練習を終えたあと、俺が二人の指導を担当することになっている。
二人ともやる気があり、お互いに競い合って練習をしているためか成長が早い。
親父も二人を褒めていた。
「なんにせよ、慕ってくれてるやつは大切にしろよ」
「………そんなのわかってますよ」
俺の兄貴分も弟を大切にする人だったから、こいつらの気持ちは少なからずわかる。
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