第127話

 多分、俺にとっては村谷も高弥も平等に大切な存在だったのかもしれない。

 村谷は女子だったから、俺はそれを好意と勘違いしていたのだろう。

 まぁでも……本当にそうかどうかは、今の俺には分からないが……。


「そ、そうなんですか……島並先輩は両方いけると……」


「だからそうじゃねぇよ! お前本当にアホだな!」


「はぁ!? 私はアホじゃありません! 島並さんが変な事を言うからじゃないですか!」


「お前が変な誤解するからだろうが!」


 いつものように言い合う俺と初白、その瞬間俺はなんだか安心していた。

 良かった、こいつは本当にいつも通りなのだとそう思えたからだ。


「まぁでも……先輩も色々あったんですね」


「……まぁな」


「それで、今はあの動画が学校中で広まって大変人気者になっていると」


「あの動画は悟と大島がだな……」


 ジト目で俺を見ながら初白はそう言って来る。

 なんなんだこいつは……怒ってるのか?


「良かったですねぇ~うちのクラスの女子も島並先輩カッコいい!! って言ってましたよ? 今までとは違って」


「何が言いたいんだお前? なんで怒ってるのか全くわからないぞ?」


「別に怒ってません!!」


「いや、怒ってるじゃん……」


 なんでこんな怒ってんだこいつ?

 まぁ、確かに巻き込んだのは悪かったと思うが、なんでいきなりこんな怒りだす?


「……あの、誤解が無いように言っておきますけど……助けてくれたことに私は感謝してます」


「な、なんだこんどは感謝し始めて」


「……ありがとうございました」


「いや、お前が無事なら俺はそれで良い」


「……でも……もうあんな無茶しないでくださいね」


「え……」


 そう言う初白の目は真っすぐ俺の目を見ていた。

 いつものあのふざけた感じではなく、初白は真剣な表情で俺にそう言っていた。

 

「……あぁ、分かってるよ」


「……もう、あんなのごめんですから」


「はは、だよな……背中にナイフ刺さった人間なんて早々お目に掛かれないだろ?」


「ふざけないでください!」


「悪かったよ……でも、安心しろ。俺はお前が想像してよりも強いから」


 俺がそう言うと、初白は俺から視線を反らした。

 

「さて、じゃあそろそろ話しも落ち着いたところで……何か食べない?」


「そう言えば注文まだだな」


「あ、そういえばお腹減りました」


「さっきから店員がチラチラ見てくるのはそのせいか」


 考えてみれば注文しないまま15分くらい話てたしな、そろそろ注文しないと居ずらいしな。

 俺達はそれぞれ料理を注文し、料理が運ばれて来るのを待った。

 

「そう言えばお前、結局テストはどうだったんだ?」


「うっ! い、いや……そ、それは……」


 明らかに動揺し始めた初白。

 怪しい……事が事だったので普通に俺の過去を教えてしまったが、果たしてこいつはテストの点数平均60点を取ることが出来たのだろうか?


「おい、何点だった?」


「……先輩これ美味しいですよ、一口どうですか?」


「いらん、それで何点だったんだ?」


「うっ………」


「はぁ……お前勉強したんじゃないのか?」


「し、しましたよ!! でも残念ながら人間は、短期間に急激な成長は出来なかったようで……」


「まぁまぁ、でも頑張ったよ赤点は一個もなかったんだから」


「まぁ、それなら……よくやったとは思うが……」


「本当ですか!!」


「でも平均60点は行かなかったんだろ?」


「ぎくっ!」


「リアルでぎくっ! なんて言うのはお前くらいだろうな」


 大方全教科ギリギリ赤点回避とかそんな点数だろう。

 まぁ、短期間で赤点常習の初白が良くやったというべきか。


「はぁ……今度のテストでも高弥に勉強見てもらえよ、流石にあの点数は色々やばいぞ」


「それなら僕じゃなくて平斗が教えてあげたら?」


「なんでだよ、俺は教えるの下手だからパス」


 それに初白も俺より高弥の方が良いだろう。

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