第121話
昼休みにでも初白に会いに行ってみよう。
たく、会いたくないときには現れて、会いたいときに会えないなんて、あいつどんだけ間が悪いんだ。
そして、昼休み。
俺は直ぐに一年生の教室に向かった。
そこでも俺の事を一年生が見てきた。
小山は確か一年からあの配信の事を聞いたって言ってたけど……まぁ恐らくあのバカ二人だろうな。
俺はそんな事を考えながら、そんなバカ二人と初白が居るクラスにやって来た。
「えっと……初白は」
俺が教室内を覗くと数人の生徒が俺に気が付き、俺を見てコソコソ何かを話していた。
前までの感じとは違って陰口を言っている感じではなかったが、あまりいい感じはしなかった。
「あぁぁ! 兄貴じゃないですか!」
「ん? あぁ大島か、もう怪我は良いのか?」
俺が教室内を見ていると、頭に包帯を巻いた大島が丁度教室に帰って来た。
俺を見るなり声を上げると、大島はいきなり俺に頭を下げ始めた。
「すいませんでした!!」
「え? い、いやなんだよお前……やめろよ……」
「あんな奴らの挑発に乗って、一緒に居た初白さんたちも巻き込んで……しかも兄貴にまでご迷惑を……」
「いや、あいつの目的は俺だったから、どっちかって言うと謝るのは俺だ。悪かったな、俺がことを大きくしちまったせいで」
「いえ! そんなことありません! 俺たちは兄貴に助けられなかったら今頃どうなってたか分からないんです!」
熱の籠った言葉で俺にそう言う大島。
大島と悟の怪我が一番ひどかったと聞いた俺は、二人の事を結構心配していたのだが、元気そうで何よりだった。
まぁ、それはそれとして……。
「ところでお前……」
「はい、なんですか?」
「まさかと思うが……岡崎の配信して動画を学校中にばらまいてたりしてないよな?」
「はい! ばっちりばらまきました! 岡崎さんに兄貴のすごさを学校中に分からせる絶好の機会だと言われて!」
「やっぱりお前かっ!」
「あでっ! い、痛いっすよ兄貴!」
「やかましい! 何馬鹿な事してんだ! 別に俺はあのままでも生活に支障はなかったんだよ!」
「で、でも兄貴がすごいって事……他の奴らにも知ってほしくて……」
「なんでだよ……別に俺は他人にどういわれても……」
「俺は嫌なんですよ!」
俺がそう言いかけた瞬間、大島は急に真面目な表情になって声を上げた。
「俺は兄貴を尊敬してます。今回の件で改めて兄貴みたいになりたいって思いました。そんな尊敬してる人が悪く言われるなんて……俺はいやなんです!」
「お前……」
大島の言葉に俺は思わず笑みをこぼした。
そうか……あんな動画なんて無くても俺を慕ってくれる奴がいたから、俺はあのままの生活でも良いと思えたのかもしれないな。
「はぁ……たくろくでもねぇのを尊敬してるな、お前は」
「そ、そんな事無いですよ!」
「そう言えば、悟はどうした?」
「彼女と飯ですよ、あいつあの一件以来、彼女の傍を離れないんす」
「まぁな……二回も危ない目に合わせちまったんだ……心配してんだろ」
「まぁ、確かに気に食わねぇ野郎ですけど……あいつは責任感は強いっすから」
「お前が悟を褒めるなんて珍しいな」
「べ、別に褒めてなんて無いっすよ! それより何か用があって来たんじゃないんすか?」
「あぁ、そうだ。初白居るか? ちょっと用があるんだが……」
「あぁ、わかりました、じゃあ俺が呼んできますよ」
大島はそう言うと教室の中に入って行った。
しかし、戻って来たのは大島だけだった。
「すいません兄貴、初白さんなんかどっか行っちまったみたいで」
「あぁ、そうか……悪かったな、じゃあまた後で来てみるよ」
「わかりました、俺からも初白さんに兄貴が探してたって伝えておきます」
「あぁ、頼んだぞ」
また会えなかった。
一体あいつ、どこで何をしてるんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます