第120話
「本当に大丈夫?」
「だ、大丈夫です! きょ、今日は話せてよかったです。それじゃぁ……」
「あ、いやもう遅いし送るよ」
俺はそう言って城崎さんを送るために城崎さんと一緒に自宅に帰り始めた。
「……さっきの話の続きだけど」
「は、はい?」
「城崎さんはいないの? 好きな人とか」
「え?」
そう言うと城崎さんは何かを考え始め、ハッと何かに気が付くと俺の顔をジーっと見始めた。
「な、なに?」
「あ……なんでもないです……」
俺がそう尋ねると、城崎さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
やはりどこか調子が悪いのだろうか?
「あ、あの……居ます……」
「え? そうなの?」
まぁ、女子高生だしな……好きな人くら居るか。
前も思ったけど、彼女くらいの美少女ならきっと恋愛面は大丈夫だろうな。
「はい……多分……この気持ちはそう言う事なんだと思います」
「そっか……じゃあ一つだけアドバイスしてあげるよ」
「アドバイスですか?」
「あぁ……その人との幸せを夢見るんじゃなくて、その人の幸せを望んであげた方が振られたときは気が楽だよ。まぁ城崎さんはまず振られないと思うけど」
振られた俺が後輩の女の子にカッコつけて何を言ってんだか……。
「あ、あの……それって島並さんの過去の経験ですか?」
「まぁね」
「振られちゃったんですか?」
「あははは、まぁね」
「わ、私は島並さんの事素敵だと思います!!」
「ありがとう、お世辞でもうれしいよ」
後輩の女の子に気まで使わせてしまった。
なんていうか、俺って情けないなぁ……。
「お、お世辞なんかじゃありません! 私にとって島並さんはっ……」
「え?」
そう城崎さんは言いかけて口を閉じた。
一体何を言おうとしたのだろうか?
彼女の顔は既に耳まで真っ赤になっていた。
「な、なんでもないです……」
「大丈夫? 顔真っ赤だけど……」
「だ、大丈夫です」
城崎さんの声はどんどん小さくなっていった。
やっぱり少し調子が悪いみたいだな。
そんな事を考えてる間に城崎さんの家に到着した。
「そ、それじゃあ……送ってくれてありがとうございます」
「あぁ、じゃぁまた道場でね」
「はい……」
俺は彼女にそう言って自分の家に帰り始めた。
ゆっくり休んで調子を整えて欲しいものだ。
*
翌日の事だった、俺の学園生活はすっかり変わっていた。
今まで目も合わせてくれなかった女子達が俺に「おはよう」と言ってくれるようになり、男子からは声を掛けられるようになった。
これも誤解が解けたおかげなのかもしれない。
小山は相変わらずだし、クラスメイトも少しづつだが俺に声を掛けて来るようになった。
「はぁ……」
「どうしたんだい平斗」
「いや……なんかこういうの久しぶりな感じがしてさ……」
「疲れたのかい?」
「まぁな……お前はなんだか嬉しそうだな」
「そりゃあね、親友の誤解が解けて今じゃその親友は話題の中心だ。自分の事じゃないのに、こんなにうれしいなんて僕も驚きだよ」
「そうかよ……」
こいつは良くも悪くも正直な奴だな。
まぁ、そこが良いところでもあったりするんだが。
「あ、そう言えば高弥、初白にあったか?」
「あぁ……昨日廊下であったけど?」
「そうか……元気そうだったか?」
「うん、なんていうか……いつも通りだけど、少し変わった感じはしたかな?」
「そうか……」
昨日は会えなかったからな……今日は会って少し話をしたいのだが、昼休みに教室に居るだろうか?
そう言えばあいつにテストで平均60点以上取ったら俺の過去を話すなんて言ったけど……あんな事になったし、あいつには色々説明してやる必要があるな。
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