第116話
「別に良いよ、気にしてないし」
「いや、俺あの配信見ながら興奮しててさ! 格好良かったぜ! 背中にナイフを刺されながら戦ってるところとか! 背中は大丈夫なのか?」
「まぁ、医者で見てもらったし……もう良いだろ、そろそろ授業が……」
「それで配信で言ってた村谷って彼女か? それとも片思い? どっちだよ?」
「話を聞け! もう授業始まるんだからさっさと席にだな!」
「えぇ~良いじゃねぇかよぉ~。俺、お前から話聞くの楽しみで学校来たんだぜ!」
「だったら、あとで話れやるからさっさと席戻れ、先生来ちまっただろうが!」
「あ、本当だやべっ! じゃあ放課後色々聞かせてくれよ!」
そう言って小山は俺の元を離れていった。
全くなんだったんだあいつは……。
正直色々聞かれるのは面倒だったぞ。
俺はそんな事を考えながら、授業を受けた。
授業中も他の生徒からの視線をやたら感じ、授業が終わるとまた俺をクラスの奴らがチラチラ見てくる。
なんなんだ一体……。
そんな視線を感じつつも俺は初白や香奈のことが心配だった。
あの二人はそもそも学校に来ているのだろうか?
昼休みにでも教室を尋ねてみようと考えていると、高弥がニコニコしながら俺に近づいてきた。
「平斗ごめん、今日はお昼は僕ちょっと用事が出来ちゃった」
「え? そうなのか? 先生から呼び出しでもされたのか?」
「まぁ、そんなところさ……だから今日はお昼は他の奴と食べてくれよ」
「え? あ、あぉ……」
俺がそう言うと高弥はなんだか嬉しそうに笑いながら自分の机に戻って行った。
*
昼休み、僕は平斗の嘘をつき校舎裏の人気のない場所に来ていた。
「すいません、急に呼び出して」
「あぁ、別に大丈夫だよ」
初白三から呼び出されたのは今日の朝の事だった。
メッセージで今日のお昼に話があるから校舎裏に来てくれと呼び出され、僕は昼休みにこうして校舎裏に来ていた。
平斗には内緒でとの事だったので、俺は平斗に嘘をつき、校舎裏にやって来た。
「それで話ってなんだい?」
「まずはその……この間は助けてくれてありがとうございました」
「無事でよかったよ、その後大丈夫? 平斗も心配してたよ?」
「はい……それでその……話というのなんですけど」
「うん、どうかしたのかい?」
何となく僕は彼女が何を言うのかを分かってしまった。
それは僕にとっては嬉しいことで、彼女にとっては恐らく勇気のいる事だろう。
「私は……真木先輩が好きでした……」
「そうなんだ」
知っていた。
知っていて僕はわざと知らないふりをしていた。
彼女の態度や平斗と居る時の態度を見れば、それは容易に分かる。
でも、彼女の中ではそれは過去の事のようだ。
だから僕は嬉しくなっていた。
「私……ずっと島並先輩に真木先輩をどうやったら落とせるか相談してたんです。でも……この前の事件で気が付きました。本当にピンチになった時や怖い時、私はずっと島並先輩に助けを求めていて……」
「そうなんだ」
「知らない女の子と居る時もなんだかモヤモヤして、しかもあんな風に助けられたら嫌でも自分の気持ちがわかっちゃって……」
「なんでそれを僕に?」
「ずっと島並先輩には、私は真木先輩が好きなんだって言ってて……しかも告白の為に色々協力してもらってきました。だから先輩の好意を無駄にしないためにも、この事と私の今の気持ちを真木先輩に伝えようと思って」
「そっか……」
そんなのは初白さんが自分の気持ちに気が付くずっと前から僕は知っていた。
だから特別驚いたりもしない。
しかし、今の状況では初白さんが平斗と結ばれるのは難しい。
僕はそんな事を考えながら、初白さんに言う。
「僕って本当にモテないなぁ~」
「え? で、でも……」
戸惑う初白さん。
そんな彼女に僕は笑顔でこういう。
「モテるのは僕の友達だからさ」
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