第115話

 周りの視線がうざい……。

 そう思ったのはいつ以来だろうか?

 クラスで普通に過ごしているだけなのに、みんななぜか俺の事をチラチラ見てくる。

 いつもは俺なんて居ないみたいに無視するくせに……。

 朝から続くそんなクラスの様子に俺は少し疲れ、昼休みは人の少ない屋上で飯を食べようと考えていた。

 そんな時だった、授業が終わってまだ数分しか経って居ないというのに、他のクラスの女子がクラスに入ってきた。

 なんだ?

 誰かに用事か?

 なんてことを考えていると、その子が俺の机に近づいてきた。

 もちろん面識はないし、正直名前も分からない。

 

「あ、あの……」


「なんだ?」


 俺がそう言うと、彼女は緊張しているのか口を震わせながら俺に話始めた。


「は、話したい事があるので……す、少し良いですか?」


「え? あ、あぁ……別に良いけど」


 まさかこの学校に高弥や初白以外に俺に話掛けて来る奴がいるとは……。

 俺は彼女に言われるまま、教室を出て彼女の後ろをついていった。

 人気の少ない屋上近くの階段だの踊り場に着くと彼女はいきなり俺に深々と頭を下げ始めた。


「ありがとうございます!!」


「え? いや……何が?」


「あ、あの私昨日の配信見て……」


「あぁ……」


 まさかこの子もあのヤクザに脅されてたのか?


「私……あの男の人に脅されて……ど、どうしたらわからなくて……でも、貴方が昨日あの人を倒してくれて……これでやっと安心して生活できます」


 泣きながら話す彼女。

 そうか……この子もあの男のせいで不安な毎日を送ってたのか……。


「いや、俺があいつを倒したのは偶然だよ。別に君の為にしたわけじゃない、だからお礼を言う必要なんてないよ」


「でも! 私は本当に安心したんです!」


 彼女はそう言うと、俺の手を取って泣きながら俺に俺を言い始めた。


「ありがとうございます! 本当にありがとうございます! 私……誰にも相談できなくて……」


「わ、わかった。わかったから少し落ち着いてくれ!」


「う……す、すいません」


 まさかこんなに感謝されるとは……。

 まぁ、彼女からしたら怖かったことなんだろうしな……初白の奴は大丈夫だろうか?


「あ、あの……すごくカッコよかったです。ずっと島並先輩の悪い噂しか聞かなかったので、怖い人なのかと思ってたんですけど……あの噂って嘘だったんですね」


「いやまぁ……病院送りにはしたのは本当だけど」


 あながち噂も間違いではないんだよなぁ……俺が村谷に惚れてたのは事実だし。

 彼女は俺にお礼を言うと、そのまま自分のクラスに帰って行った。

 まさか直接言いに来る奴もいるとは……ってか、あのヤクザの男うちの学校の女子生徒何人を脅してたんだ?

 俺はそんな事を考えながら、自分のクラスに戻る。

 すると、高弥がクラスの連中に囲まれていた。

 まぁいつもの光景だ、高弥は人気者だからな……。

 なんてことを俺が思っていると、クラスの中心的存在の男子が俺の元にやってきた。

 こいつとも一回も話をしたことは無い。

 確か、名前は小山(こやま)だった気がする。


「あ、あのさ……島並」


「ん? なんだ?」


「お、お前って…その……」


「なんだ? もう授業が始まるが?」


「あ、あぁ悪い、そ……その……か、カッコいいな!」


「はぁ?」


 こいつは初対面に近い俺にいきなり何を言ってるんだ?

 てか、こいつが俺の事を影でぼろくそに言ってた事を知ってるんだが?

 そんな相手にこいつは一体何を言ってるんだ?


「なんだよ急に」


「あ、いや……その……昨日の配信見てさ」


 お前もかよ……。

 あの配信って一体何人が見てたんだ?

 俺がそんな事を考えていると小山はいきなり頭を下げた。


「ごめん!」


「な、なんだよ、いきなりカッコいいって言って見たり、謝ったり……」


「お、俺……お前の事良く知らないのに影で酷いこと言いまくってた!」


 知ってるよ。

 てかそれ本人に直接言うか?

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