第114話
*
退院後、まず俺は親父に怒られた。
危険な事に首を突っ込むなと普通に怒られ、罰として一カ月の道場の掃除を言いわたされた。
まぁ仕方ないな、心配をかけたわけだし。
母さんからは泣かれてしまったし。
岡崎とは退院する時に連絡先を交換した。
なんでもまた何か困ったら連絡して来いとの事だった。
まさか岡崎と連絡先を交換する日が来るとはな……。
そして今日は久しぶりに俺が学校に登校する日だった。
「行ってきまーす」
俺は母さんにそう言い、家の外に出て学校に向かい始めた。
岡崎がこの前の一件を一部動画配信していたと言っていたが、同じ学校の奴で見ていたやつなんて居るのだろうか?
俺がそんな事を考えながら通学路を歩いていると、後ろから誰かに肩を叩かれた。
「やぁ平斗、ケガはもういいのかい?」
「高弥、お前こそ大丈夫か?」
「平斗よりわね、久しぶりの学校だね」
「あぁそうだな」
俺は病室で岡崎から聞いた話を高弥にした。
「え? じゃ、じゃあ村谷さんと岡崎って……」
「あぁ、兄妹みたいだ……父親は違うようだが」
「そっか……それにしてもコソコソ何かしてると思ったら、まさか動画配信してたなんて」
「あいつなりに俺の誤解を解こうと色々考えてたらしい、まぁ実際効果があるか分からないけど」
「まぁね……動画配信を見ていた生徒が学校に居れば少しは誤解も解けるかもしれないけど」
「まぁな……というか、俺はそんな事より初白や香奈が心配だよ」
「あぁ……確かに怖い目にあったもんね」
「トラウマになってるかもな……あいつ強がってはいたけど泣いてたし……」
実際、俺の一番の心配はその二人だった。
悟や大島も大けがを負ってはいたが、体の傷は時間を掛ければ直せるが、心の傷は治せるかなんてわからない。
「あいつ……大丈夫かな」
「心配かい?」
「……まぁな、それになんて声を掛けてやったらいいか」
「いつも通りにしてあげるのが一番じゃないかな?」
確かにそうかもしれないが……あいつがいつも通りじゃないとこっちも調子が狂っちまうからな。
そんな話をしながら俺たちは学校に到着した。
いつも通り、校舎に入りいつも通り教室に向かう。
そんな道中、俺はなんだか違和感を感じた。
「なんだか見られてる気がするんだが……」
「確かになんか皆平斗を見てるね」
昇降口でも廊下でも人とすれ違うたびにみんなが俺を見てきた。
まぁ、前もこういうことはあったし、あまり気にしていなかったのだが、今回はいつもよりはかなり多い。
教室に到着し、俺が教室のドアを開けるとクラス中が俺を見てきた。
なんだ?
一体何が起こっているんだ?
なんでこんなにも見られるのか不思議に思いながら、俺は自分の席に座る。
すると、なぜか俺の机の上には複数の手紙が置かれていた。
パット見ただけでも5通ほどが机の上にあり、俺は一体何事なのかと思い、直ぐに手紙を一枚手に取り中身を確認した。
「手紙かい?」
「あぁ、一体誰からだ?」
俺は高弥と一緒に手紙の内容を確認した。
内容は岡崎の行った配信についてだった。
なんでも俺が倒したあのヤクザは色々な女子の弱みを握って脅し、いかがわしい事をさせようとしていたらしいのだが、俺があのヤクザを倒したことでその子達が助かったらしい。
手紙にはこれで安心して過ごせるとか、あの男をやっつけてくれてありがとうなど、お礼の言葉が多かった。
差出人の名前はなかったが、ついでとはいえ他にも誰かの助けになったのならよかった。
「結構見てる子いたんじゃない?」
「そうかもな……」
俺は手紙を読みながら微笑み、手紙を鞄の中にしまった。
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