第111話
「……それでいろいろ調べてみた」
「村谷の事をか?」
「あぁ……あの子の境遇知ってるか?」
「昔ちらっと聞いた、捨てられて今の両親に拾われたって言ってたけど……まさか」
「あぁ、あの子と俺は兄妹ってことになる」
「嘘だろ!?」
俺は思わず大声を出してしまった。
「本当だ、そのころの俺は一緒に逃げた男とあの女の間に出来たのが千咲ちゃんだと思ってた、でも実際は俺の勘違い……あの子もあの女に捨てられた子だった」
「じゃあ、お前は……」
「あぁ、復讐したくてあの子を人質に取ったつもりだった……でもお前からボコボコにされた後、彼女が既にあの女から捨てられて、今の両親に拾われていることを知ってな……正直お前には感謝したよ、おかげで同じくあの女に捨てられた妹に酷いことをしなくて済んだ」
「……そうだったのか」
「あぁ、だから安心しろ」
「何をだよ?」
「復縁だよ、あの子に惚れてるんだろ? 俺はあの子に三年前のお前との一件を正直に話すつもりだ。そうすれば、あの子にとってお前はヒーローだ、惚れないわけがない」
「ば、馬鹿何を言ってんだよ!! 俺は別にそんな見返り求めてねぇ!」
「そうか? 弓島に啖呵切って力の差を見せつけた時はスカッとしたぜ」
そう言いながら岡崎はスマホ画面を俺の方に見せる。
スマホには俺と弓島が戦っているときの映像が流れていた。
「おまっ! いつの間に!!」
「信憑性を上げるためにな……ちなみにさっきの一件は一部ライブ配信してた」
「何やってんだアホ!!」
「お前の誤解を解くためにはこうした方が手っ取り早いと思ったんだよ……」
岡崎はそう良いながらスマホをしまった。
「悪いが、この動画はもう千咲に送った」
「なんでそんなことを……お前に得なんて一個もないだろ?」
「得か……別に損得で動いたわけじゃねぇよ……ただ、お前の生活を元に戻してやりたかっただけだ」
「………ぶち壊したお前が何を言ってんだよアホ」
「うるせぇ、一応俺だって気にしてたんだよ!」
俺はそんな岡崎の話を聞きながら、ふと笑みをこぼす。
「もう寝ろ、明日から警察の事情聴取が始まるぞ」
「あぁ、そうだな……」
俺は岡崎にそう言いながら目を閉じた。
明日からいろいろ大変だとは思うが、とりあえず今は寝よう。
いろいろあって疲れた……。
*
警察から自宅に送ってもらったとき、一番驚いたのはお母さんだった。
お父さんも驚いていたけど、お母さんは涙を流しながら私を抱きしめた。
警察から既に話が言っているらしく、家に到着してからは過保護なくらい私を構ってくれた。
怖かった、見知らぬ男に囲まれ服を脱がされそうになった。
伸びてくる男の手が怖くて、ニヤニヤ笑う男達が気持ち悪かった。
怖くて怖くて仕方なかったとき、私が求めたのは白馬の王子様でも警察官でもなく、不思議なことに島並先輩だった。
だから、先輩が来た時、私は安心して体から力が抜けるのを感じた。
「大丈夫か?」
そう言われた時、私はいつもの姿を見せて先輩を安心させようとした。
でも、出来なかった。
そんな私に先輩はいつもより優しくこう言った。
「怖かったろ……もう大丈夫だ」
そう言われた瞬間、私は目から涙があふれ出した。
そして、その時私は気がついてしまった……私が好きなのはこの人なんだと……。
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