第107話

「アンタを信じて! やってきた高校時代が! 俺にとっての! 黒歴史なんだよ!!」


「うぐっ・・・・・・」


 岡崎は両腕で弓島の攻撃を防いではいるが、ダメージがどんどん蓄積されている様子が見ていても分かる。


「勝手についてきたのはお前だろうが!!」


「あがっ!」


 岡崎はそう言いながら弓島の顔を掴み、そのまま弓島の頭に自分の頭をぶつける。

 弓島がその衝撃でフラついたところで、岡崎は弓島を押しのけ、弓島の顔を殴る。


「がはっ!」


「お前は! なんでこんな外道にまで落ちた! そんなに悔しかったか!」


「あぁ、悔しいねぇ! だから俺は強くなりたくて色々したよ! でも越えられない壁が・・・・・・自分に限界があることを悟って、こんな物に頼ることになっちまったよ……」


 弓島はそう言いながら、錠剤のような物を取り出し岡崎に見せつける。

 

「馬鹿! やめろ! そんな得たいのしれない物、死んじまうかもしれねーぞ!」


「うるせぇ! 俺は……お前もそこのガキも……ボコボコにしてやんだよ」


 弓島はそう言いながら、錠剤を飲む。

 既に目が血走り、様子のおかしい弓島の様子が錠剤を飲んだ瞬間、再びおかしくなっていった。

 体の血管が浮き出てきて、血走っていた眼球は最早真っ赤になっていた。


「弓島……お前……」


「岡崎! 絶対お前を殺してやる!!」


 先程まではボコるといっていた弓島の言葉は殺すという言葉に変わった。

 このままでは岡崎が危ないと二人から離れたところにいた俺も感じた。

 

「岡崎! 離れろ! そいつはヤバイ!! 何をするかわかんねーぞ!!」


「怪我人は黙ってろ・・・・・・」


 岡崎はそう言いながら弓島の方を睨む。

 にらみ合う二人。

 先に動いたのは弓島だった。


「なっ! あがっ!」


 岡崎は弓島の動きに付いて行けず、顔に重たい一撃を受け倒れる。


「うっ……は、はやい……」


「終わりだ岡崎ぃぃ!!」


 弓島は倒れた岡崎に向かって自分の足を振り下ろそうとする。


「岡崎!!」


「先輩!」


 俺は初白の手を押しのけ、岡崎の元に走る。 背中には激痛が走る。

 しかし、行かなければ俺の前に岡崎が死ぬ。 俺はそう考えた瞬間、体が動いていた。

 しかし、途中で間に合わない事を俺は悟ってしまった。

 岡崎は両腕で防御しようとする。

 しかし、防御すれば岡崎の両腕は恐らく折れてしまい、多少の時間稼ぎにしかならない 俺が背後を取られなければ・・・・・・俺はそう思いながら、足を動かす。


「岡崎ぃぃぃ!!」


「くっ」


 弓島が咆哮にも似た声を上げる。

 間に合わない!

 そう俺が思った瞬間、弓島の背後に誰かが現れた。


「お前の相手は僕だ!」


「がはっ! お、お前は……」


「はぁ……はぁ……何してたんだよ……高弥……」


「済まない、弓島に隙を付かれてしまってね」


 高弥はどこかから持ってきた角材を手に持ち、弓島に向かって構える。

 

「気を抜くなよ、そいつもう一錠薬を飲みやがった」


「なるほど……それより平斗、君の方が大丈夫なのかい? 背中に何か刺さってるけど」


「俺は大丈夫だ! それより気を付けろよ!」


 そう俺が言っていると、弓島が立ち上がり高弥に向かっていく。


「くっ! なんだこの力……」


「高弥!」


「先輩!」


 俺が高弥の援護に入ろうとすると、初白が俺の腕を掴んで止めた。


「何やってるんですか、背中にナイフ刺さってるんですよ!?」


「大丈夫だ、それより高弥が!!」


「自分のことも考えて下さい!! 警察に電話したので大丈夫です!」


 そうは言われたが、俺は高弥の事が心配だった。

 高弥は強い、それは俺も良く知っていた。

 しかし、あいつは暴力を嫌い、自分から喧嘩をするのが嫌いなのも俺は知っていた。

 だからこそ、これ以上高弥を戦わせたく無かった。

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