第106話

 背中にある違和感、俺はすぐに自分の背中に何かが刺さったのだとわかった。

 

「へへ……ガキが! あんまり舐めてるからこうなんだよ!!」


「先輩!!」


「いやぁぁぁ!!」


「てめぇ!」


 先ほど倒したヤクザが俺の背中にナイフを突き刺してきた。

 それをみた初白や香奈は顔を真っ青にし俺の方を心配そうに見ていた。

 岡崎は直ぐさま構え、ヤクザに反撃しようとする。


「なるほど……俺もまだまだだな、武道家が背後から刺されるなんて……」


「なっ! お、お前なんでそんな平気なんだ! 確かに刺したはずだぞ!!」


 驚くヤクザに俺は背中にナイフが刺さったまま、後ろを振り向きヤクザの首を掴んで持ち上げる。

 

「なんだ? まだ痛い目に会いたいのか?」


「ば、化けも……のが……」


「あぁ、そうだ……俺は化け物だよ……」


 俺はそう言って笑いうながら再びヤクザに威圧を掛ける。

 

「お前にもう一度教えてやる……あんまり俺を舐めるな……ナイフ程度で俺を殺せると思うなよ!」


「ひ、ひぃぃぃ!! わ、わかった! 俺が悪かった! だ、だから殺さないでくれ!!」


 俺は涙を流しながらそう言うヤクザを俺は思い切り投げ飛ばす。


「ふん!!」


「あがっ!」


 倉庫の壁に叩きつけられ、ヤクザはそのまま気絶した。

 

「はぁ……はぁ……」


「おい、大丈夫か?」


「お、お前に……心配……されるとは……思ってなかったぜ」


「車を呼ぶ、お前は早く病院に行け」


「大丈夫だ……」


「背中にナイフが突き刺さってんだぞ、大丈夫なわけねーだろ」


「良いから……うぐっ……」


「馬鹿! 下手にナイフを抜こうとすんな! 大量出血で死ぬぞ!」


「大丈夫だ……良いから……さっさと警察に電話しろ」


「馬鹿かお前! 良いからさっさと……」


 そう言いかけ、岡崎は廃墟の方をに視線を移した。

 一体どうしたのか、俺は気になって顔を上げ岡崎の向いている方を見る。

 すると、そこには息を荒げ、目を血走らせた弓島が立っていた。


「弓島……お前、まだやる気なのか?」


「うるせぇ岡崎! 俺は強くなった! 俺はもう誰にも負けない! 誰にも馬鹿にされない!」


 明らかに様子がおかしかった。

 もしかしたらヤクザが渡したと言う薬を過剰に摂取したのかもしれない。


「岡崎……お前じゃ無理だ」


「だろうな……でも俺は何もやってないし……お前はそんな体だし、仕方ないだろ……」


「あいつは今普通じゃない! やめておけ!」


「おい、お嬢さんたち……こいつを絶対に動かすなよ、下手したら死ぬぞ」


「は、はい」


 岡崎は初白と香奈にそう言い、弓島の方に歩いていく。

 

「おい岡崎!」


「……今更、悪かったなんて言っても許されないことは……わかってんだよ……でもよぉ……あの時の自分がガキだったことも……それでお前の人生がどうなったのかも……だから少しは役に立つさ」


 岡崎はそう言いながら、弓島の前に立った。

 

「岡崎ぃぃぃ!!」


「……弓島、お前も……俺のせいでこんな風になっちまったのかもな……」


「ふんっ!!」


「ぐはっ!」


 弓島は岡崎の胸を殴る。

 岡崎は衝撃で後ろに倒れ、そこに弓島がまたがり岡崎の顔を殴り始めた。

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