第105話

 ヤクザの猛攻は続いた。

 流石にさっきの奴らとは違い動きに切れがあり、動きも速い。

 

「中々頑張るなぁ、ガキがよぉ!!」


「まぁ、当たったら痛いんで」


「言うじゃねぇか、もっと痛い目に会うってのによぉ!!」


 そう言いながらヤクザは内ポケットから折りたたみのナイフを出した。

 なるほど、さっきの奴らとは覚悟も違うらしい。

 簡単に俺を傷つけられるってことか……。


「おらおら! どうしたどうした? 当たっちまうぞ!」


 まぁ……この程度か……ヤクザと言ってもまだ若いし、チンピラとあんまり代わりないな。

 なら……。


「ふん!」


「なっ!」


 俺はナイフを突き出してきたヤクザの腕を掴み、ヤクザの手首を叩いてナイフを手から落とす。


「おらよっ!」


「うぉ!!」


 俺はそのまま掴んだ腕を持ってヤクザを地面に投げ飛ばす。

 

「がはっ!」


 確かに動きは早いし、力も強い……でも、やっぱりうちの道場の門下生以下だ。

 正直俺からしたら相手にならない。


「あんまりガキを舐めるな」


「くっ……な、なんだとぉ……」


 叩きつけられたヤクザは俺を見上げながら苦しそうに言う。

 俺はそんなヤクザを見下ろしながら、落ちたナイフを拾って外に投げ捨てる。


「どうした? ナイフが無いとガキにも勝てないのか?」


「んだとぉ……あんまり調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」


 再び向かってくるヤクザ。

 俺はそんなヤクザの足を引っかけ、ヤクザを地面に転倒させる。


「うぉっ!」


「おいおい、大丈夫か? 何も無いところで転んで……」


「くっ! お前ぇぇぇ!」


 男は直ぐに立ち上がり、またしても俺に向かってくる。

 しかし、俺はそんな男の腹部に向かって思い切り拳をぶつける。


「ふん!」


「あがっ!!」


 男はそのまま、崩れるようにそのまま地面に座りこんだ。


「悪いな……アンタより遙かに強い人を俺は知ってる」


 俺はそう言いながら、座り込んだヤクザと同じ目線にしゃがみ、胸ぐらを掴んで尋ねる。

「弓島達に何をした? 言え!」


「なんのことだか……わからねぇ……ぐはっ!」


 俺はとぼけるヤクザにもう一発拳をぶつける。


「言え」


「わ、わかった……言う……あ、あいつらに渡したのは筋力を増強する薬だ!」


「一体それはどこから仕入れてる?」


「そ、それは俺にもわからねぇ……俺だって組織じゃ下っ端だ、そんな重要な話しが下りてくるわけねぇだろ」


「それもそうか……だが、アンタのやったことを俺は許す気はねぇ……」


 俺はそう言いながら、ヤクザの男を威圧する。

 

「な、なんだお前……が、ガキの癖にい、一体何者だ!!」


「さぁな……答える必要は無いだろ?」


「お、俺をやったら、組の奴が報復に来るぞ! それでも良いのか!」


「アンタは同じ組の奴の中で俺に勝てる奴が一人でも居ると思うか?」


「そ、そんなの当たり前だ! 兄貴さえ! 兄貴さえ居れば!」


「じゃあ、その兄貴に伝えておけ……島並家の息子が相手をするとな……」


 俺はそう言って、ヤクザから手を話し、入り口の方に居る岡崎の方に戻る。

 岡崎は何故かスマホを構えながら俺を見ていた。


「お前……本当に何者だ?」


「ただの高校生だよ、それよりさっきから何をしてんだ?」


「まぁ、証拠をな……片付いたみたいだし長居は無用だ、さっさと行くぞ」


「あぁ……」


 俺は岡崎にそう答えながら、隣にいた初白の方を見る。

 

「初白……悪かったな、俺のせいで……」


「い、いえ……でも先輩本当に強いですね……」


「……まぁな、怖かったろ? 本当に……悪かった」


 俺はそう言いながら頭を下げる。


「先輩!!」


 すると、急に初白が声を上げた。

 どうしたんだ?

 俺はそう思いながら顔を上げると、背中に衝撃が走った。


「え……」

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