第104話

 それを見た瞬間、俺は言葉を発するより前に動いていた。

 まずは初白と香奈を拘束していた男を殴り飛ばし、そのままの勢いで周りの男達も殴り倒して行った。


「な、なんだお前!」


「弓島の奴負けやがったのか!!」


 一人もこの場から逃がす気は無かった。

 だた、俺の中にあったのは純粋なあ怒りだけだった。

 男達は俺の攻撃に倒れていった。


「大丈夫か?」


 俺は男全員が倒れるのを見届けた後、初白の方を見てそう尋ねる。


「は、はい……あは・・・・・・あはは、先輩って本当に強いんですね・・・・・・」


 そう俺が尋ねると、初白ははだけた制服を直しながら、無理矢理笑顔を作ってそう言った。

 俺はそんな初白と今だ恐怖で声も出ない香奈の頭に手を置き、優しく言葉を掛ける。


「怖かったろ……もう大丈夫だ」


「な、なんですか先輩・・・・・・今日はやけに優しいですねぇ・・・・・・」


「悪い、俺のせいだ」


「な、なんで今日は・・・・・・そんな優しいんですか……うっ……」


 そんな事を言いながら、初白は目に涙を浮かべていた。

 もっと俺がしっかりしていれば、この二人はこんな怖い思いをしなくて済んだかもしれない。

 下手に喧嘩を売った俺の責任だと、俺は自分をせめた。


「やっぱ・・・・・・お前は化けもんだな」


 岡崎はそう言いながら、倉庫の中に入って来た。

 

「いきなりおっぱじめるからビックリしたぞ」


「悪いな、気がついたら体が動いていた」


「マジで俺、要らなかったんじゃねーの」


 俺と岡崎がそんな話しをしていると、階段から誰かが下りてくる足音が聞こえた。


「あらあら~どう言う状況よこれ~」


 そんな軽口を叩きながら下りてきたのは、カラーシャツにジャケットを羽織った若い男だった。


「なんだアンタ・・・・・・」


「・・・・・・やっぱりか」


「やっぱり? どう言うことだ岡崎」


 岡崎はその人物の姿を見るなり、眉をひそめてそう言った。

 

「おい島並」


「アンタから名前を呼ばれる日が来るとはな・・・・・・なんだ?」


「あの男はヤクザだ、気を付けろ」


「なんでそんな事を知ってるんだよ」


「俺が前に連んでた奴の学校のOBだ、噂になってたんだよヤクザになった先輩が居るってな」


「なるほどな、そのOBとあの弓島が繋がってたってことか」


「あぁ、恐らくな」


 こいつが黒幕か?

 もしバックにヤクザが居るんだったら少し厄介だな……。

 

「えぇ~何? 君が全員やったの?」


「だったらなんだ?」


「いやぁ~おじさんすこーし困っちゃうかなぁ~なんたって、おじさんのお仕事を邪魔されちゃったわけだから~」


「AVの撮影が仕事? 無理矢理連れてきた女子高生を使ってか? 完全に違法行為だろうが」


 俺がそう言うとヤクザの男はニヤニヤ笑いながら近づいてきて俺にゆっくり話す。


「ヤクザが違法じゃ無い稼ぎ方で稼ぐと思うか? なぁ君……この責任どうとってくれるの?」


「責任? そんなの取る必要あるのか?」


 俺はヤクザの男に対して強きでそう言う。

 初白と香奈はそんな俺とヤクザの男の様子を見ていた。


「はは、君は威勢が良いねぇ……高校生でヤクザにここまで言える子は中々居ないよ」


「それは褒め言葉として受け取っていいのか?」


「あぁ……褒めてやるよっ!!」


 男はそう言いながら、俺の顔面に殴り掛かってくる。

 俺は間一髪のところで拳を避け男を睨む。


「いきなりだな」


「まぁ、とりあえずお前をボコらないと気が済まないからなぁ!!」


 そのままヤクザの男は俺に攻撃を始めた。

 さっきまでの弓島や取り巻き達とは動きが違う。

 俺は男の動きを避けながら、岡崎に言う。


「岡崎! この子達を連れて下がれ!」


「命令すんなよ」


 岡崎はそう言いながらも初白と香奈を連れて倉庫の外に出る。

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