第101話


 廃墟の中は少し崩れているとこはあったものの、人の気配がありところどころにどこかから拾ってきたのであろう粗大ごみのソファーや椅子なんかがあった。


「なんか、廃墟の割には埃も少ないな……」


「ここにたむろしているようだし、馬鹿でも少しくらい綺麗にはするだろ?」


「電気は通ってないのか……こんなところにたむろする大学生って……」


「まぁ、これだけ住宅街から離れてるんだ、逆に悪いことをするのには丁度良いんだろうよ」


 そんな事を言いながら廃墟を進むと、廃墟の奥の広い部屋があった。

 奥の部屋からは光がこぼれ誰かがいる事をアピールしていた。

 俺たちはそこにこの事件の黒幕が居ると理解し、部屋に向かった。


「おぉ……誰かと思えば、お前確か悟の先輩じゃないか……」


「よぉ、久しぶりだな……ヒーロー君」


 奥の部屋にはいかつい男が二十人ほどいた。

 その中央には悟の先輩だったあの男がニヤニヤ笑いながら座っていた。


「誰かと思えば弓島(ゆみしま)かよ……お前、まだこんなバカな事やってんのか?」


「岡崎、お前も来たのか? 中坊に負けた雑魚が」


「いや、お前も俺に負けてんだろうが……てか岡崎、あんたこいつと面識あるのか?」


「面識も何も俺の高校時代のつれだ」


「え? ってことは俺がお前をボコりに行った日も居たのか?」


「あぁ、最初にぶっ倒されてたけど……なんだ、お前ら最近もあってるのか? 仲がいいねぇ」


「黙れ!! 俺はもう昔とは違う!!」


 俺は目の前の弓島という男のそんな言葉を聞きため息を吐いた。


「はぁ……それでも俺に負けたじゃねぇか、岡崎の事を言えないだろ」


「うるせぇ!! 俺はあの時の屈辱を忘れてねぇ! それにそこの岡崎と俺は違う!! やられっぱなしのそいつと一緒にすんな!!」


「失禁やろうが、随分な物言いだな」


「なんだ失禁やろうって?」


「あぁ、こいつな……」


「うるさぁぁぁぁい!! 黙れ!」


 俺が岡崎に弓島が俺のに負けた時の事を話そうとすると、大声をあげて俺の言葉を遮る。


「はぁ……なんか滑稽だね」


 ずっと後ろで見ていた高弥も呆れてため息を吐いている。


「悪いことは言わねぇ。弓島もうやめておけ、こいつには勝てない」


「岡崎ともあろう男が情けねぇな……高校では負け知らずだったくせに」


「こいつには負けたろうが」


 岡崎も呆れた様子で弓島に言う。

 しかし、まさか犯人がこいつだったとは……やられてやられっぱなしが嫌だったのか?

 だが、それなら悟を通して俺を呼び出すだけで済んだはずなのに、なんでわざわざ岡崎の名前を使って俺を呼び出したんだ?


「弓島、なんで俺の名前を使った?」


「岡崎……俺はお前にも用があったのさ……」


「用? 一体なんだ?」


「三年前のことだ! 忘れたのか!!」


「あぁ、忘れたね……正直高校時代の事は思い出したくもない」


「忘れただと!? ふざけるな! お前のせいで俺たちは中坊一人に負けた腰抜けと言われ! お前がグループを解散させた後は他のグループから舐められっぱなしだった!」


「そうか……それがどうした? 可哀想だったなぁって慰めて欲しいのか?」


「お前のせいだ……全部お前の! お前にわかるか! 他グループの奴に舐められ、ボコられる俺たちの気持ちが! だから俺が強くなった……もう誰も俺を舐めないくらいに!」


「でも……こいつには負けたんだろ?」


「あぁ、だからリベンジすんだろうが! 岡崎、お前への復讐と一緒になぁ!!」


 弓島がそう言った瞬間、周りの男たちは拳を構える。

 

「……弓島……アホだアホだと思っていたが……まさかここまでのアホだったとはな」


「おい、結局お前の子分のせいじゃねぇか、親分のお前が責任とって俺に殴られろ」


「今は親分じゃねぇよ、てか親分になったつもりもねぇっての」

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