第100話



「言っておくけど、僕は貴方を一切信じる気はありません」


「信用ねぇなぁ、まぁ当たり前だけど」


 俺たちは岡崎に連れられて、岡崎の名を語った偽物の元に向かっていた。

 高弥は終始岡崎を睨みつけながら道を歩いていた。

 疲れないのだろうか?


「高弥、あんまり気を張りすぎてると疲れるから少し肩の力抜けよ」


「でも、いつこいつが裏切るかわからないよ!」


「まぁ、裏切るかどうか知らんけど、裏切ったら敵として処理するから問題ない、それにこいつなら居ても居なくても一緒だろ」


「結構酷いなお前」


「酷いことしたのはお前だろうが、まぁ少しは役に立てよ盾として」


「一応言っておくけど、今回俺が味方だぞ」


 話をしながらやって来たのは、町外れにある無人になった廃墟だった。

 

「いかにもって感じだな」


「ここにあいつらは居る、言っておくが逃げるなら今だぞ、こいつらかなりヤバイことも平気でやる連中だからな」


「お前も昔は似たようなヤバイ奴だったろうが、まぁ今も変わらねーけど」


「俺以上だと思うぞ、バックにヤクザがいとかいう噂もある」


 なんで俺がそんな奴らに狙われてるのかよくわからんが、このまま黙ってもいられないのも事実だ。

 どうせ俺が行かなくても向こうからやってきそうなもんだが。


「同じ大学生なんだろ? もしかして大学も同じとかそう言うオチか?」


「バカ言うな、俺の通ってるところは馬鹿は入れねぇよ、一緒にすんな」


「同じような事を昔やったのはお前だろうが」


「で、どうする? 三人だけで来たけど、多分ここの馬鹿どもは手を出してくるぞ」


「まぁ、お前が裏切ることを考えておつりがくるくらいには余裕があるつもりだが?」


「その自信はどっから来るんだよ」


 岡崎はそう言いながら俺の顔を見て話し始めた。


「昔、お前らが二人だけで来た時、負けるなんて考えてもいなかった……お前らの強さを目の当たりにして、自分の考えが間違っていたと知った時、俺はお前ら……というかお前に恐怖したよ」


「俺は正直楽勝だと思ってたけどな」


「だろうな……味方になるとここまで頼もしいとはな」


 岡崎はそう言って、廃墟の中に進む。


「行くぞ、俺も少しくらいは役に立ってやる」


「言われなくても行くっての」


「少しでも変な動きをしたら……わかってますよね?」


 俺達三人は話をしながら、廃墟の奥に進んでいく。





 学校からの帰り道だった、街中で異様な集団を見たのは……。


「え? 何あれ?」


 なんだかガラの悪そうな人たちが、街中を歩いていた。

 しかも集団で歩いており、何やら誰かを取り囲んでいる様子だった。

 

「あの子って……確か島並と前に一緒だった……」


 集団の中の女の子に私は見覚えがあった。

 あの子は確か……島並と真木の後輩だったっけ?

 前に一緒にファーストフード店に居たし……。


「千咲? 何してるの?」


「え? あぁごめんね、なんかあの集団が異様だなって……」


「え? 何あれ? 何あの集団!」


「さぁ? でもなんかヤバイ感じするよね? 大丈夫かな?」


「………」


 私には関係の無いこと、そう私は思っていた。

 でも、なんでだろう……あいつの顔が頭を横切るんだろう……。


「通報でもしておく?」


「でも、何かしてる訳じゃないし……」


「まぁ、他の人がしてるかな?」


 私は友達とそんな話をしながら、喫茶店に入った。


 一体何だったんだろうあの集団は……。

 それにあいつのあの言葉……。


『何か最近変わったことはあったか?』


 なんで今になって私に接触してきてそんな事を聞いてきたんだろう……。

 まさかとは思うけど、あの集団と何か関係があるとかじゃないよね?


「千咲? どうしたの? なんかボーっとして」


「え? あぁごめんね、少し考え事しててさ」

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